外傷性脊髄損傷で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
外傷性脊髄損傷の疫学に関する問題です。脊髄の中でも頸髄は可動性が高く、外部からの力に対して脆弱であるため、外傷性脊髄損傷では頸髄損傷の発生頻度が最も高いことが知られています。他の選択肢は、男性に多いこと、受傷原因は交通事故だけでなく転倒も主要であること、発症年齢は20歳代と高齢者でピークがあること、完全麻痺よりも不完全麻痺の比率が高いことなど、いずれも最新の疫学データや一般的な知識と異なるため誤りです。
選択肢ごとの解説
- 1. 外傷性脊髄損傷の発生頻度は、女性よりも男性の方が高いことが統計的に示されています。これは、男性がより高リスクな活動(スポーツ、労働災害、交通事故など)に関わる機会が多い傾向があるためと考えられます。正しくは:男性に多い。選びやすい理由:特定の神経疾患や自己免疫疾患の中には女性に多いものもあるため、知識が曖昧だと混乱しやすいかもしれません。混同注意:多発性硬化症や全身性エリテマトーデスなど、女性に多い他の神経系疾患や全身疾患の疫学と混同する可能性があります。
- 2. 正解。外傷性脊髄損傷において、最も多く発生するのは頸髄損傷です。頸椎は脊柱の中でも最も可動性が高く、頭部の重みを支える構造のため、外部からの衝撃に対して脆弱であり、損傷を受けやすい部位であるためです。
- 3. 交通事故は外傷性脊髄損傷の主要な原因の一つですが、近年では高齢者の転倒による脊髄損傷が増加しており、統計によっては転倒が最も多い原因となることもあります。そのため、「最も多い」と断定することはできません。正しくは:交通事故や転倒による受傷が多い。選びやすい理由:以前の統計や若年層の損傷原因としては交通事故が上位であったため、そのイメージから選んでしまいがちです。混同注意:若年層の主な受傷原因と、全年齢層を合わせた最新の疫学データでの最多原因を混同しやすいです。
- 4. 以前は20歳代が脊髄損傷の好発年齢とされていましたが、近年の高齢化社会においては高齢者の転倒による損傷が増加しており、発症年齢は20歳代と60歳代以上の二峰性のピークを示すか、あるいは高齢者が最も多くなっている傾向がみられます。正しくは:発症者の年齢は20歳代と60歳代以上でピークがみられる。選びやすい理由:若年層の活発な活動に伴う事故を連想しやすく、20歳代が最多であるという古い知識に引きずられやすいです。混同注意:過去の統計データや、スポーツ事故など特定の受傷機転の好発年齢と、脊髄損傷全体の最新の疫学データを混同しやすいです。
- 5. 頸髄損傷を含む外傷性脊髄損傷全体において、救急医療や画像診断の進歩により不完全麻痺の割合が増加傾向にあり、完全麻痺よりも不完全麻痺の比率が高いことが報告されています。正しくは:頸髄損傷では不完全麻痺者の比率が高い。選びやすい理由:脊髄損傷という重篤なイメージから、完全麻痺が多いと考えてしまう可能性があります。混同注意:脊髄損傷の重症度と、国際脊髄損傷機能分類(ASIA分類)における完全麻痺・不完全麻痺の定義や統計的な比率を混同しやすいです。
国試ポイント
外傷性脊髄損傷の疫学(性差、好発部位、受傷原因、好発年齢、麻痺のタイプ)は国家試験で頻繁に問われる基本的な知識です。特に近年の高齢化に伴う変化(受傷原因の変化、好発年齢のシフト)を理解しているかが重要となります。
混同注意
受傷原因については「交通事故」と「転倒」のどちらが最も多いか、統計データによって変動があるため注意が必要です。好発年齢は「20歳代」だけでなく、「20歳代と高齢者」という二峰性を理解しておくこと。麻痺のタイプは「完全麻痺」と「不完全麻痺」の比率において、不完全麻痺が増加傾向にあることを把握しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、外傷性脊髄損傷の疫学における最新の統計データを踏まえた知識(特に高齢化の影響)や、損傷後の機能予後、合併症に関する知識が問われる可能性があります。
関連知識
国際脊髄損傷機能分類(ASIA分類)による損傷レベルと完全・不完全麻痺の評価方法、各脊髄レベルでの機能障害の主な特徴、脊髄損傷に続発する主な合併症(自律神経過反射、褥瘡、異所性骨化、痙縮など)の知識も関連します。