60歳の女性。脊髄小脳変性症。四肢体幹の運動失調で座位保持が困難であったが、2週間の座位保持練習を行い、端座位は上肢で支持しなくても保持できるようになった。今後行うバランス能力改善の運動療法として最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
脊髄小脳変性症の患者は運動失調によりバランス能力が低下しますが、症例の60歳女性は上肢の補助なしに端座位を保てるようになったとあるため、その次のステップとして端座位での重心移動練習は、動的なバランス能力を向上させるために最も適切です。静的な座位保持能力が向上した段階で、より高次のバランス課題へ移行することで、日常生活動作に必要なバランス能力を獲得できます。
選択肢ごとの解説
- 1. バランスボール上での上肢挙上は、不安定な支持面での運動であり、端座位保持が安定した直後の段階としては負荷が高すぎる可能性があり、転倒のリスクを考慮すると適切性に欠ける場合があります。特に脊髄小脳変性症の運動失調がある患者にとっては難易度が高すぎます。正しくは:座位保持がさらに安定し、座位での重心移動が十分に可能になった後に、より高難度の動的バランス練習として検討する。選びやすい理由:バランスボールはバランス練習によく用いられるため、直感的に選びやすいかもしれない。混同注意:座位での動的バランス練習全般と、適切な難易度の選択。
- 2. 椅子からの立ち上がり練習は、座位保持が安定した患者にとって次の段階として有効な練習ではありますが、本症例では「バランス能力向上」を主目的としているため、より直接的にバランスを要求される「端座位での重心移動練習」が、現段階ではより適切と考えられます。立ち上がり練習は、移乗動作の練習であり、バランス能力の一部ではあるものの、座位での重心移動の安定化が先決です。正しくは:端座位での重心移動が十分に安定し、さらなる機能向上を目指す段階で、立ち上がりや移乗動作の練習として取り入れる。選びやすい理由:立ち上がりは日常生活動作に直結するため、重要と判断し選びやすい。混同注意:バランス能力向上と移乗動作能力向上。
- 3. 正解。60歳女性の脊髄小脳変性症患者は、四肢体幹の運動失調があるものの、2週間の練習で上肢の補助なしに端座位を保てるようになったと記載されています。この状況から、静的な座位バランスは獲得できており、次のステップとして動的なバランス能力の向上が必要です。端座位での重心移動練習は、安定した座位から一歩進んだ動的バランス練習であり、体幹の協調性や平衡反応を促し、バランス能力のさらなる向上に繋がるため、最も適切です。選びやすい理由:患者の現在の能力レベルと目標に合致しているため、迷うことなく選択できる。
- 4. 片膝立ち位での上肢挙上は、片膝立ちという不安定な支持面での練習であり、難易度が非常に高いです。脊髄小脳変性症による運動失調がある患者にとって、端座位が安定したばかりの段階でこのような高難度の練習を行うと、転倒のリスクが高く、適切ではありません。より高次のバランス練習であり、現在の能力レベルには見合っていません。正しくは:立位でのバランスが十分に安定し、より高度な体幹・下肢の協調性が必要な段階で、段階的に導入を検討する。選びやすい理由:片膝立ち位はバランス練習として一般的であるため、選択肢として魅力的である。混同注意:座位での動的バランス練習と立位での動的バランス練習の区別。
- 5. 立位で不安定板を用いた練習は、立位でのバランス能力が十分に安定した段階で行う非常に高難度のバランス練習です。端座位が安定したばかりの患者にいきなり立位での不安定板練習を導入することは、転倒リスクが極めて高く、適切ではありません。段階的なリハビリテーションの原則に反します。正しくは:立位でのバランスが完全に安定し、より高難度の動的バランス課題に挑戦する段階で、安全に配慮しながら導入する。選びやすい理由:不安定板を用いた練習はバランス能力向上に効果的と知られているため、選びやすい。混同注意:座位でのバランス練習と立位でのバランス練習、および不安定な支持面での練習の難易度。
国試ポイント
脊髄小脳変性症患者の進行度に応じた適切なバランス練習の選択が問われる。座位保持能力の獲得後、次の段階として動的バランス能力を向上させるための運動療法を選ぶ。
混同注意
各選択肢の運動強度の違いや、患者の現在の能力レベルと練習の目的を混同しやすい。座位保持が安定した後の段階として、座位での動的バランス練習を選択することが重要である。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず患者の現在の能力レベルを正確に把握し、その能力レベルをわずかに超える程度の負荷(Next Challenge)となる練習を選択する。
関連知識
脊髄小脳変性症患者の理学療法では、運動失調の進行度に合わせて段階的にバランス練習を進める。静的バランス→動的バランス→機能的活動への応用と段階付けを行う。運動療法に加え、環境調整や自助具の活用も重要。