4歳の男児。顕在性二分脊椎症による脊髄髄膜瘤の術後。立位の様子を図に示す。短い距離であれば独歩可能である。予測される機能残存レベルの上限で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下図の男児の立位姿勢は、股関節の屈曲、膝関節の過伸展(反張膝)、足関節の尖足が特徴的です。股関節屈筋はL1-L3、膝関節伸展筋(大腿四頭筋)はL2-L4、足関節背屈筋(前脛骨筋)はL4-L5、足関節底屈筋(腓腹筋・ヒラメ筋)はS1-S2に主に支配されます。この姿勢から、股関節屈筋はある程度機能し、大腿四頭筋は不全麻痺で膝関節を過伸展で代償しており、足関節背屈筋は麻痺していることが示唆されます。これらの所見は、機能残存レベルの上限がL4である場合によく見られます。L4レベルでは、大腿四頭筋が部分的に機能するため、装具や補助具を使用すれば短距離の独歩が可能となることが多いです。L4より上位のレベルでは、膝関節伸展がさらに困難となり、独歩はより難しくなります。L5レベルでは、足関節背屈筋が機能するため、尖足は軽減されます。
選択肢ごとの解説
- 1. L2レベルの機能残存がある場合、股関節屈筋群の活動が十分であるため、一般的には股関節の屈曲拘縮が生じやすく、下図のような著しい股関節屈曲位での立位は示さないと考えられます。また、膝関節伸展筋群の麻痺もより重度である可能性が高いです。正しくは:L2レベル残存では、股関節屈曲筋が働くため、より股関節屈曲が強いか、逆に股関節屈曲拘縮が生じていることが考えられます。選びやすい理由:二分脊椎症では損傷レベルにより様々な機能障害を示すため、判断が難しい場合があります。混同注意:L2は股関節屈曲が主となるため、この図のような膝関節の過伸展を伴う姿勢とは一致しにくいです。
- 2. L3レベルの機能残存がある場合、大腿四頭筋の筋力がある程度保たれるため、膝関節の伸展はより安定し、下図のような著しい膝関節過伸展位での立位は示さないと考えられます。膝関節過伸展は、大腿四頭筋の筋力低下を代償するために現れることが多いです。正しくは:L3レベル残存であれば、大腿四頭筋が働き、膝関節伸展が比較的保たれるため、膝の過伸展はこれほど顕著ではないと考えられます。選びやすい理由:L3残存でも歩行能力は向上しますが、この図の立位姿勢とは合致しない可能性があります。混同注意:L3は膝関節伸展に関与するため、この図のような膝関節過伸展位とは矛盾が生じます。
- 3. 正解。下図の立位姿勢では、股関節の屈曲(屈曲拘縮の可能性も含む)、膝関節の過伸展、そして足関節の底屈(尖足)が顕著です。短い距離であれば独歩可能であるという情報と合わせて考えると、L4レベルの機能残存が最も妥当です。L4では大腿四頭筋の一部が機能するものの不十分であり、膝関節の過伸展(反張膝)で代償し、足関節では前脛骨筋の麻痺により尖足を呈することが典型的です。正しくは:この肢位はL4レベルでの大腿四頭筋の不完全麻痺と足関節背屈筋の麻痺をよく表しています。選びやすい理由:他の選択肢も歩行能力と関連するレベルであるため、鑑別が難しいことがあります。混同注意:機能残存レベルの判断は、具体的な筋力や姿勢の特徴を詳細に評価する必要があります。
- 4. L5レベルの機能残存がある場合、前脛骨筋や長母趾伸筋、長指伸筋といった足関節背屈筋が機能するため、足関節の尖足はこれほど著しくないと考えられます。下図の尖足傾向は、これらの筋が麻痺していることを示唆しています。正しくは:L5レベル残存であれば、足関節背屈筋が機能するため、尖足はこれほど顕著ではないはずです。選びやすい理由:L5残存は独立歩行が可能な場合も多いため、混同しやすいです。混同注意:L5では足関節背屈筋の機能が期待されるため、尖足位は示しにくいです。
- 5. S1レベルの機能残存がある場合、腓腹筋やヒラメ筋といった足関節底屈筋が機能し、また足底屈筋群の筋力も期待できるため、下図のような著しい尖足は示さないと考えられます。さらに、膝関節過伸展もここまで顕著ではない可能性が高いです。正しくは:S1レベル残存であれば、足関節底屈筋や一部の足関節外がえし筋が機能するため、より安定した立位・歩行が期待でき、尖足もこれほど著明ではないでしょう。選びやすい理由:S1残存でも歩行能力は向上しますが、この図の立位姿勢とは合致しない可能性があります。混同注意:S1は足関節底屈筋の機能と関連するため、この図の尖足位はS1レベルより上位の障害を示唆します。
国試ポイント
二分脊椎症における脊髄損傷レベルと下肢機能の関係を理解しているか、特に各脊髄分節が支配する主要な筋群と、それによって生じる姿勢や歩行様式の特徴を識別できるかが問われています。典型的な代償パターン(例:膝関節過伸展による大腿四頭筋麻痺の代償)も重要です。
混同注意
各脊髄分節の支配筋と、それによる機能障害および代償動作を正確に結びつけることが重要です。特に、L2, L3, L4, L5, S1レベルで歩行能力がどの程度残存し、どのような特徴的な肢位を示すかについて、具体的なイメージを持っていないと混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
この機能残存レベルに基づいて、適切な装具療法や理学療法プログラムを立案する。例えば、L4残存であれば、短下肢装具(AFO)やKAFOの必要性、歩行訓練における代償動作の指導などが考えられます。
関連知識
二分脊椎症における下肢の機能評価、運動発達、装具療法、そして各脊髄分節が支配する筋の具体的な名称と作用。また、シャント機能不全や水頭症合併といった全身状態も考慮に入れる必要がありますが、本問は純粋な機能残存レベルの判断です。