65歳の女性。左変形性股関節症。3年前からの左股関節痛に対して後方侵入法で人工股関節置換術を受けた。術後のエックス線写真(別冊No. 3)を別に示す。手術後3週までの患側の理学療法で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
人工股関節全置換術後、特に脱臼リスク管理が重要ですが、それと並行して早期からのリハビリテーションが推奨されます。等尺性筋力訓練は関節に負担をかけずに筋力維持・増強が可能であり、術後翌日から開始される一般的な理学療法です。これは深部静脈血栓症予防や術後機能回復の促進に貢献します。他の選択肢は、脱臼肢位の誤認識、過度な安静、不適切な可動域制限、過度な免荷など、人工股関節術後の一般的なリハビリ原則と異なる内容です。
選択肢ごとの解説
- 1. 後方アプローチによる人工股関節置換術後では、股関節の内旋・屈曲・内転の複合動作は脱臼リスクを高めるため避けるべきです。立ち上がり動作で内旋位を取ることは非常に危険です。正しくは:立ち上がり動作は、股関節を軽度外旋位に保ち、内転や屈曲が過度にならないように注意して行います。患側の股関節に過度な負担をかけないように、非患側から立ち上がるなどの工夫も重要です。選びやすい理由:通常の立ち上がり動作では内旋を伴うことがあるため、自然な動きと誤解する可能性があります。混同注意:股関節内旋が脱臼肢位になるのは後方アプローチの場合であり、前方アプローチでは異なる脱臼肢位になることと混同する可能性があります。
- 2. 正解。人工股関節置換術後早期(術後翌日から数日以内)には、疼痛管理と脱臼予防に配慮しつつ、関節可動域訓練や等尺性筋力訓練を開始するのが一般的です。特に等尺性運動は関節への負担が少なく、筋力維持・増強に有効であり、深部静脈血栓症の予防にも繋がります。選びやすい理由:「翌日から」という表現が、術後早期すぎるのではないかと疑念を抱かせることがありますが、適切な脱臼予防策を講じながら実施される早期リハビリの一環です。混同注意:他動運動や自動運動、抵抗運動など、他の種類の運動訓練の開始時期と混同する可能性があります。等尺性運動は早期から実施しやすい特性があります。
- 3. 人工股関節置換術では、術後早期離床と荷重が推奨されています。ベッド上安静を長く続けると、深部静脈血栓症や肺炎などの合併症リスクが増加し、回復が遅れます。術後数日以内には座位訓練や立位訓練、歩行訓練が開始されます。正しくは:術後早期(通常は術後翌日から)にベッドから離れて座位や立位、歩行訓練を開始し、合併症予防と機能回復を促進します。選びやすい理由:「安静」は術後回復に必要という漠然としたイメージから、長期間の安静が正しいと思われがちです。混同注意:他の手術(脊椎手術など)の術後管理で、一時的に厳格な安静が必要な場合と混同する可能性があります。
- 4. 後方アプローチの場合、股関節屈曲90度以上で内転・内旋を伴うと脱臼リスクが高まりますが、45度という制限は厳しすぎます。通常は90度程度の屈曲制限が設けられますが、これも厳密な角度というよりは「過度な屈曲」を避ける意味合いが強いです。術後早期から日常生活動作に必要な範囲での屈曲は行われます。正しくは:後方アプローチでは股関節屈曲90度以上を制限する場合がありますが、日常生活動作に必要な範囲の屈曲(例:靴下を履く、椅子に座るなど)は指導の下で徐々に許可されます。45度という制限は一般的ではありません。選びやすい理由:脱臼予防のために股関節の可動域制限が必要であることは認識しているため、具体的な角度は間違っていても制限自体が正しいと思い込む可能性があります。混同注意:股関節屈曲の制限角度や、前方アプローチの場合の制限と混同する可能性があります。具体的な制限角度は施設や医師の方針によっても多少異なりますが、45度は稀です。
- 5. 人工股関節置換術では、通常術後早期から部分荷重や全荷重が許可されます。セメント固定の場合は術後翌日から全荷重、ノンセメント固定の場合でも術後早期から部分荷重が開始されることが多いです。長期間の免荷は筋力低下や骨粗鬆症のリスクを高め、回復を遅らせます。正しくは:術式(セメント固定かノンセメント固定か)や患者の状態にもよりますが、通常は術後早期から部分荷重または全荷重が許可され、歩行訓練が開始されます。選びやすい理由:骨折など他の疾患の術後管理で免荷が必須となる場合があり、その知識と混同して免荷が安全な選択肢であると考える可能性があります。混同注意:人工膝関節置換術などの他の関節手術や、大腿骨頸部骨折などの骨折に対する手術の荷重制限と混同する可能性があります。
国試ポイント
人工股関節置換術後の理学療法の急性期管理、特に脱臼予防肢位の理解、早期離床・荷重の原則、そして適切な運動療法の開始時期が問われる問題です。術後アプローチ法(前方/後方)による脱臼肢位の違いを理解しているかが重要となります。
混同注意
術後早期の安静と早期離床のバランス、脱臼予防のための具体的な肢位や可動域制限の数値、荷重制限の期間と程度。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず術式(この場合は後方侵入法)を確認し、それに応じた脱臼肢位と禁忌動作を特定します。次に、問われている術後の時期(この場合は術後3週まで)に合わせたリハビリテーションの原則(早期離床、早期荷重、適切な運動開始)を当てはめて各選択肢の正誤を判断します。
関連知識
人工股関節置換術のアプローチ法(前方、後方)、それぞれの脱臼肢位、深部静脈血栓症の予防策、術後疼痛管理、ROM訓練、筋力増強訓練、歩行訓練の段階的導入。セメント固定とノンセメント固定による荷重開始時期の違い。