20歳の男性。脊髄損傷。プッシュアップ動作を図に示す。この動作が獲得可能な最も高位の機能残存レベルはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
プッシュアップ動作は、体幹を支持し、上肢を伸展させて体重を支える運動です。この動作には、肩関節の安定性と肘関節の伸展能力が不可欠です。脊髄損傷の機能残存レベルにおいて、C6レベルでは手関節の背屈が可能となり、この背屈筋群が機能することで、腱固定作用(テノデーシスアクション)が生じます。この腱固定作用を利用することで、手指の把持力が補助され、支持面を使った部分的なプッシュアップ動作や移乗動作が可能になるとされています。完全なプッシュアップ動作には上腕三頭筋の機能が強く求められるためC7レベルが有利ですが、「最も高位の機能残存レベル」という条件から、限定的であっても動作が可能なC6が適切です。C5以下では、上腕三頭筋の機能が欠如しているため、プッシュアップ動作は困難です。
選択肢ごとの解説
- 1. C4レベルの機能残存では、主に呼吸筋(横隔膜)と僧帽筋上部が機能しますが、上肢を地面に押し付けて体を持ち上げるプッシュアップ動作に必要な筋力(特に上腕三頭筋や手関節・手指の屈筋・伸筋)が完全に欠如しているため、この動作は不可能です。正しくは:C4レベルでは、プッシュアップ動作はできません。選びやすい理由:脊髄損傷レベルが高いほど重度ですが、具体的な残存機能と動作能力を結びつける知識がないと推測が難しいです。混同注意:C5やC6の残存機能と混同する可能性があります。
- 2. C5レベルでは、三角筋や上腕二頭筋が機能し、肩の屈曲・外転、肘の屈曲が可能になりますが、肘を伸展させて体を持ち上げる上腕三頭筋の機能がありません。また、手関節や手指のコントロールも不十分なため、プッシュアップ動作はできません。正しくは:C5レベルでは、上腕三頭筋が機能しないためプッシュアップ動作はできません。選びやすい理由:C5で肩や肘の動きが出始めるため、何らかの移乗動作が可能になると思いやすいですが、プッシュアップはより多くの筋群が必要です。混同注意:C6レベルの機能、特に手関節伸展の機能と混同しやすいです。
- 3. 正解。C6レベルの機能残存では、手関節の背屈(伸展)が可能になります(橈側手根伸筋などが機能)。この手関節伸展機能を利用することで、手指をわずかに屈曲させる「腱固定作用(tenodesis action)」が働き、物を把持する補助的な機能を得られます。また、C6レベルでは上腕三頭筋はまだ不完全ですが、肩や肘の筋力が向上するため、特に支持面を利用した体重移動や部分的なプッシュアップが可能になります。完全なプッシュアップにはC7レベルが必要とされますが、最も高位(重度側)で獲得可能なレベルとしてC6が挙げられます。これは特に、支持面を活用した軽度なプッシュアップや、移乗動作の一部としてのプッシュアップを指すと考えられます。正しくは:C6レベルで手関節の背屈が可能となり、腱固定作用を利用してプッシュアップ動作の基礎を形成できます。選びやすい理由:C7と迷うかもしれませんが、腱固定作用を活用した機能獲得を理解していればC6が正解と判断できます。混同注意:C7レベルの完全な上腕三頭筋の機能と混同しやすいです。
- 4. C7レベルでは、上腕三頭筋が完全に機能し、肘の伸展が強力に可能になります。これにより、より安定した完全なプッシュアップ動作や移乗動作が可能になります。しかし、問題は「最も高位の機能残存レベル」を問うているため、C7よりも高位であるC6で限定的ながらも動作が獲得できるため、C7は「最も高位」ではありません。正しくは:C7レベルは確かにプッシュアップ動作に十分な機能を持ちますが、最も高位のレベルではありません。選びやすい理由:上腕三頭筋の機能がプッシュアップに不可欠であると考えると、C7を選びがちです。しかし、「最も高位」という条件を見落とすと誤答につながります。混同注意:C6レベルで獲得可能な機能とC7レベルで獲得可能な機能の区別が曖昧だと混同しやすいです。
- 5. C8レベルでは、手指の屈筋群や伸筋群が機能し、より精密な手の動きや把持能力が向上します。これはプッシュアップ動作の安定性には寄与しますが、C8はプッシュアップ動作が可能な「最も高位」のレベルではなく、より下位(軽度側)の損傷レベルを指します。正しくは:C8レベルはプッシュアップ動作に十分な機能を持ちますが、最も高位のレベルではありません。選びやすい理由:手や指の機能向上で動作が容易になることは理解できますが、「最も高位」という条件から外れます。混同注意:C7以下の下位レベルの機能と混同しやすいです。
国試ポイント
脊髄損傷の各レベルにおける残存機能と、それによって獲得可能なADL能力を正確に理解しているかが問われます。特に、手関節背屈による腱固定作用の重要性や、上腕三頭筋の機能がどのレベルから発現するかの知識が鍵となります。「最も高位」という条件に注意が必要です。
混同注意
C6とC7の機能の差、特に上腕三頭筋の完全な機能獲得がC7からであるため、プッシュアップに上腕三頭筋が必須と考えるとC7を選びがちになります。しかし、腱固定作用を利用した限定的なプッシュアップがC6で可能であることを知っているかがポイントです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず設問が「最も高位」を求めているか、それとも「完全な機能」を求めているかを確認することが重要です。また、各レベルでどの筋群が機能し、どのような基礎的な動作が獲得できるかを具体的にイメージできるように復習しましょう。特にプッシュアップや移乗といった基本的な動作に必要な筋群と、それがどの脊髄レベルで獲得されるかを正確に紐付けておくことが大切です。
関連知識
脊髄損傷の国際標準神経学的分類(ISNCSCI)における各キーマッスルの機能レベル、腱固定作用(テノデーシスアクション)のメカニズム、ADL(日常生活動作)における各残存機能の応用。