34歳の女性。28歳で再発寛解型の多発性硬化症と診断を受け、再発のため入院した。理学療法実施後、起き上がり時に背中から下方に電撃痛を訴えた。この徴候で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
レルミット徴候は、頸部を前屈した際に、脊髄の脱髄病変部位が伸張され、脊髄後索の神経線維が刺激されることで、電撃的な痛みが背中から下肢へと走る現象です。これは多発性硬化症に特徴的な感覚障害の一つであり、設問の「起き上がり時に背中から下方に電撃痛を訴えた」という記述と合致します。
選択肢ごとの解説
- 1. バレー徴候は、座位で上体を後方に倒した際に脚が挙上する現象で、主に錐体路障害、特に下肢の痙性麻痺の兆候として見られます。多発性硬化症でみられる電撃痛とは異なります。正しくは:バレー徴候は、錐体路障害によって、座位で上体を後方に倒した際に、抗重力筋の過緊張により下肢が持ち上がってしまう現象を指します。選びやすい理由:神経系の徴候であるため、多発性硬化症との関連性があるように感じられるかもしれません。混同注意:他の神経学的徴候、特に姿勢制御や筋力に関する徴候と混同しやすいです。
- 2. ガワーズ徴候は、Duchenne型筋ジストロフィーなどの筋力低下がある場合に、立ち上がる際に自分の手で膝を押し上げるようにして体を支える特徴的な動作を指します。電撃痛とは関連がありません。正しくは:ガワーズ徴候は、近位筋の筋力低下がある患者が、床から立ち上がる際に自分の手で太ももを押し上げながら立ち上がる動作を指します。選びやすい理由:筋力低下を伴う疾患でよく知られた徴候のため、神経筋疾患である多発性硬化症と関連付けて考えてしまう可能性があります。混同注意:筋力低下に伴う動作の異常と、感覚障害による電撃痛を混同しやすいです。
- 3. ホルネル徴候は、交感神経の障害により生じる眼瞼下垂、縮瞳、眼球陥凹(または顔面の発汗低下)の3つを特徴とする症状群です。首の動きに伴う電撃痛とは異なります。正しくは:ホルネル徴候は、交感神経の障害によって、眼瞼下垂(まぶたが下がる)、縮瞳(瞳孔が小さくなる)、眼球陥凹(眼球が奥まる)、発汗低下などの症状が同側に現れるものです。選びやすい理由:これも神経系の徴候であり、多発性硬化症のような中枢神経疾患で合併する可能性のある自律神経障害を連想させることがあります。混同注意:視覚器や自律神経系の症状と、感覚器系の症状を混同しやすいです。
- 4. 正解。レルミット徴候は、頸部を前屈した際に、背中から下肢にかけて放散する電撃のような痛みを指します。これは脊髄後索の脱髄病変によって引き起こされる感覚障害であり、多発性硬化症の患者によく見られる特徴的な症状です。設問の記述と完全に一致します。正しくは:正しい選択肢です。選びやすい理由:該当する症状を正確に把握していれば、迷うことなく選べるはずです。混同注意:他の多発性硬化症でみられる感覚異常や神経学的徴候と混同する可能性があります。
- 5. ウートフ徴候は、体温の上昇(入浴や運動など)によって、多発性硬化症の神経症状(視力低下、脱力、しびれなど)が悪化する現象を指します。頸部前屈による電撃痛とは異なります。正しくは:ウートフ徴候は、体温の上昇により多発性硬化症の既存症状が悪化する現象です。これは神経伝導速度がさらに低下するためと考えられています。選びやすい理由:多発性硬化症に特有の有名な徴候であるため、多発性硬化症の問題であれば正答として選びたくなるかもしれません。混同注意:多発性硬化症に関連する様々な徴候の中で、症状の内容(電撃痛か、体温による悪化か)を混同しやすいです。
国試ポイント
多発性硬化症の病態生理と関連する特徴的な神経学的徴候、特に感覚障害に関する知識が問われています。それぞれの徴候がどのような疾患で、どのような機序で生じるかを正確に理解しているかが重要です。
混同注意
多発性硬化症にはレルミット徴候の他にも、ウートフ徴候、シャープ徴候(Lhermitte徴候と関連が深い)など、様々な特徴的徴候があり、それぞれの意味を混同しやすいです。また、他の神経疾患でみられる身体所見(バレー徴候、ガワーズ徴候など)と混同しないよう、鑑別が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、多発性硬化症の他の特徴的徴候(例:ウートフ徴候、視神経炎、眼振、協調運動障害)について、具体的な症状と病態を結びつけて問われる可能性が高いです。また、脊髄病変による他の徴候や、脱髄疾患以外の神経疾患でみられる特徴的徴候についても注意が必要です。
関連知識
多発性硬化症の病態(中枢神経系の脱髄)、症状(視覚障害、感覚障害、運動麻痺、平衡機能障害、膀胱直腸障害など)、診断基準(McDonald基準)、治療(ステロイドパルス療法、疾患修飾薬)、理学療法介入の原則(疲労管理、症状に応じた運動療法)など。特に感覚障害としては、しびれ、異常感覚、痛みが挙げられ、レルミット徴候はその典型です。