急性心筋梗塞の発症後の血液検査所見で上昇がみられないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
急性心筋梗塞では、心筋細胞が壊死することで、細胞内に存在する酵素やタンパク質が血液中に放出され、その血中濃度が上昇します。代表的な心筋マーカーとしては、トロポニンT(またはI)、ミオグロビン、クレアチンキナーゼ(CKおよびそのMB分画)、乳酸脱水素酵素(LD)などがあります。これらは心筋梗死の診断や重症度評価に用いられます。一方、クレアチニンは主に腎機能の指標であり、心筋細胞の壊死とは直接関連しないため、通常は心筋梗塞発症後に上昇することはありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。クレアチニンは主に腎機能の指標であり、急性心筋梗塞による心筋細胞の壊死とは直接関連せず、通常は上昇しません。心筋梗塞に伴う循環不全による腎血流量低下で上昇することもありますが、心筋梗塞の診断マーカーとしては用いられません。正しくは:クレアチニンは通常、心筋梗塞の急性期には上昇しません。上昇する場合は腎機能低下を示唆します。選びやすい理由:他の選択肢が心筋逸脱酵素であることを知らない場合、腎機能指標と混同し、心機能と腎機能が関連するという漠然とした知識から選んでしまう可能性があります。混同注意:他の心臓マーカー(CK, LD, トロポニンT, ミオグロビン)と混同しやすい。
- 2. トロポニンTは心筋特異性の高い酵素であり、心筋が壊死すると血液中に逸脱するため、急性心筋梗塞の診断において非常に重要なマーカーとして上昇します。正しくは:トロポニンTは心筋梗塞発症後、数時間で上昇し、数日〜2週間程度高値が続くため、急性心筋梗塞の診断に広く用いられます。選びやすい理由:他の心筋逸脱酵素と同時に上昇するため、正しい選択肢であるかのように思える。混同注意:トロポニンIやトロポニンCと混同しやすいが、診断マーカーとしてはトロポニンIとTが重要。
- 3. ミオグロビンは心筋細胞にも含まれるタンパク質で、心筋壊死後比較的早期に血中濃度が上昇します。感度は高いですが、心筋特異性は低いです(骨格筋障害でも上昇)。正しくは:ミオグロビンは急性心筋梗塞発症後、最も早く(1〜2時間で)上昇するマーカーの一つであり、早期診断に有用です。選びやすい理由:早期診断に役立つが、特異性が低いことを知っていても、上昇する事実から正しい選択肢ではないと判断できる。混同注意:他の心筋逸脱酵素(特にCK-MB分画)と混同しやすいが、上昇のピークが早い点で異なる。
- 4. 乳酸脱水素酵素(LD)は、心筋梗塞発症後、少し遅れて上昇し始め、比較的長期間高値を維持します。ただし、心筋特異性は高くないため、他の臓器の障害でも上昇する可能性があります。正しくは:LDは心筋梗死の診断マーカーとして用いられますが、感度や特異性が他の酵素に劣るため、現在では補助的な情報として扱われることが多いです。選びやすい理由:上昇期間が長いため、心筋梗塞のマーカーであると判断できる。混同注意:CKやトロポニンといったより特異的なマーカーと混同しやすい。
- 5. クレアチンキナーゼ(CK)は心筋細胞に多く含まれる酵素で、心筋梗塞により壊死した心筋から血中に逸脱し、発症後数時間で上昇します。特にCK-MB分画は心筋特異性が高いです。正しくは:CKおよびCK-MB分画は、急性心筋梗塞の診断マーカーとして広く利用されます。選びやすい理由:トロポニンTと並び、心筋梗塞の重要な診断マーカーであると知られているため、正しい選択肢ではないと判断できる。混同注意:CK全体とCK-MB分画、CK-BB分画、CK-MM分画など、各アイソザイムの特異性と分布を混同しやすい。
国試ポイント
この問題は、急性心筋梗塞で上昇する主要な心筋逸脱酵素と、心筋梗塞とは直接関係のない腎機能指標であるクレアチニンを区別できるかを問うものです。各検査項目の意義と、それが心筋梗塞という病態とどのように関連するかを正確に理解しているかが重要となります。
混同注意
心筋梗塞のマーカーには、それぞれ上昇開始時間、ピーク時間、高値維持期間、心筋特異性などに違いがあります。これらの違いを理解せずに、一括りに「心筋梗塞で上昇する」と覚えていると、類似問題で誤答する可能性があります。また、腎機能指標と心機能指標の区別が曖昧だと間違えやすくなります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、各心筋マーカーの「上昇開始時間」「ピーク時間」「高値維持期間」「心筋特異性」を問う問題、または「どのマーカーが最も早期診断に有用か」「どのマーカーが最も特異性が高いか」といった比較を問う問題が考えられます。また、心不全や心筋炎など他の心疾患で上昇するマーカーとの鑑別も重要になります。
関連知識
・心筋逸脱酵素の種類とそれぞれの特徴(上昇時期、ピーク、半減期、特異性)。・心筋梗塞の診断基準(WHO基準、心筋梗塞の普遍的定義)。・心不全や腎不全など、他の心血管系疾患で上昇する可能性のある検査項目との鑑別。