45歳の男性。筋萎縮性側索硬化症。発症から半年経過しているが、ADLは自立している。主に下肢の筋力低下および鶏歩が認められる。理学療法で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
ALS患者の鶏歩に対しては、足関節の背屈を補助し、下垂足によるつま先の引っかかりを防ぐために短下肢装具(AFO)の使用が最も有効です。AFOを装着することで、歩行が安定し、転倒リスクが軽減され、患者のADL自立を維持することに繋がります。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者さんは現在ADLが自立しており、歩行も可能な状態です。現時点での車椅子の操作練習は優先度が低く、時期尚早と考えられます。正しくは:疾患の進行により歩行が困難になった段階で、必要に応じて導入を検討するべきです。選びやすい理由:ALSが進行性の疾患であるため、将来的に車椅子が必要になる可能性を考慮し、早めの準備が適切だと誤解することがあります。混同注意:ALSの初期段階と進行期の介入戦略。
- 2. ALS患者への過度な抵抗運動は筋疲労を招きやすく、病態の悪化を引き起こす可能性があるため推奨されません。特に漸増的な抵抗負荷は禁忌に近いです。正しくは:筋疲労を避ける程度の軽度な運動、ストレッチ、関節可動域運動に留めるべきです。選びやすい理由:一般的な筋力低下に対するリハビリテーションとして、筋力強化を目的とした抵抗運動が有効であるという知識から選択しやすいです。混同注意:進行性神経筋疾患における運動療法の原則と、一般的な整形外科疾患や脳卒中後遺症などでの筋力強化運動の適応。
- 3. 患者さんの主な問題は下肢の筋力低下による鶏歩であり、足関節背屈筋の機能不全が原因です。両松葉杖は上肢による支持が必要であり、鶏歩の直接的な改善には寄与せず、ADL自立段階の患者さんには過剰な補助となり、かえって負担を増やす可能性があります。正しくは:鶏歩の改善には、足関節の運動を補助する装具の選択が優先されます。選びやすい理由:歩行の不安定性や転倒リスクを軽減するために支持具を導入するという発想から、松葉杖を選択肢に含める可能性があります。混同注意:特定の筋力低下(鶏歩)に対する介入と、広範囲な筋力低下による歩行困難への介入。
- 4. ALSは運動ニューロン疾患であり、通常、感覚神経は侵されません。そのため、患者さんに感覚障害はほとんど認められず、感覚再教育は適応ではありません。正しくは:運動機能の維持・改善に焦点を当てた理学療法を実施すべきです。選びやすい理由:脳卒中など、感覚障害を伴う疾患のリハビリテーション知識と混同し、感覚再教育が一般的な神経疾患の介入であると誤解することがあります。混同注意:運動ニューロン疾患(ALS)と、感覚ニューロンや混合性ニューロンを侵す他の神経疾患の病態生理学的違い。
- 5. 正解。鶏歩は足関節の背屈筋力低下によって引き起こされ、つま先が地面に引っかかりやすくなり、転倒リスクが高まります。プラスチック製AFOは、足関節の背屈を補助し、つま先のクリアランスを確保することで、歩行の安定性を向上させ、転倒を予防するのに最も効果的です。これにより、ADLの自立を維持することができます。
国試ポイント
ALSの病態生理を理解し、その進行度と具体的な症状(鶏歩)に基づいて、最も適切な理学療法介入を選択できるかを問う問題です。特に、進行性神経筋疾患における運動療法の禁忌(過度な抵抗運動)と、鶏歩に対する装具療法の適切な適用が重要となります。
混同注意
ALSは運動ニューロン疾患であり、感覚障害は主症状ではありません。この点と、脳卒中など他の神経疾患との違いを混同しないように注意が必要です。また、進行性疾患における運動強度の設定(漸増抵抗運動の適応外)と、鶏歩に対する装具療法の選択についても正確な知識が求められます。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず患者の疾患名と病態生理、現在の具体的な症状(特に主訴やADL自立度)、そして疾患の進行度(発症からの期間など)を正確に把握します。その上で、提示された選択肢が患者の現在の状態と疾患の特性に合致し、かつ「最も適切」な介入であるか(過剰な介入や禁忌に当たる介入ではないか)を判断します。
関連知識
ALSの病態生理(上位・下位運動ニューロン障害、感覚温存)、鶏歩の原因と対策(腓骨神経麻痺、脳卒中片麻痺、ALSなど)、各種歩行補助具・装具の適応と効果(AFO、杖、車椅子など)、進行性神経筋疾患における理学療法の原則(筋力維持、ROM確保、呼吸管理、嚥下指導、QOL維持)