大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2020年改訂版(日本循環器学会)に基づく、大動脈解離のリハビリテーション治療の開始基準において、患者のバイタルサインと管理状態の組合せで基準範囲内にあるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
大動脈解離患者のリハビリテーション開始基準において、RASS-1は呼びかけに対して反応があり、覚醒レベルが許容範囲内であることを示します。他の選択肢は、高体温、頻呼吸、低酸素、高濃度酸素投与など、全身状態の不安定さを示すため、リハビリテーション開始の適切な基準とは言えません。日本循環器学会のガイドラインでは、これらのバイタルサインや管理状態の安定がリハビリ開始の必須条件とされています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。大動脈解離の急性期リハビリテーション開始基準では、意識レベルが安定していることが重要です。RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)の-1は、傾眠状態ですが、呼びかけに10秒以上眼を開けて反応できるレベルであり、活動開始が許容される範囲内と考えられます。一般的に、RASSが-2(軽度鎮静)以上であれば、安全にリハビリを開始できるとされています。
- 2. 発熱は炎症や感染を示唆し、全身状態が不安定であることを意味します。大動脈解離のリハビリテーション開始基準では、体温は37.5℃以下が望ましいとされています。38.8℃は高熱であり、リハビリ開始には不適切です。正しくは:体温37.5℃以下選びやすい理由:軽度の発熱であれば問題ないと考える学生がいるかもしれませんが、循環器疾患の急性期では厳格な管理が求められます。混同注意:安静時と活動時の体温変化の許容範囲と混同する可能性。
- 3. 呼吸数38回/分は頻呼吸であり、呼吸状態が不安定であることを示します。大動脈解離のリハビリテーション開始基準では、呼吸数は一般的に25回/分以下が望ましいとされています。この値では呼吸器系に負担がかかっており、リハビリ開始は危険です。正しくは:呼吸数25回/分以下選びやすい理由:運動時の呼吸数と混同しやすいですが、これは安静時または活動開始前の基準です。混同注意:運動負荷中の正常な呼吸数と混同する。
- 4. 酸素飽和度85%は低酸素状態であり、全身への酸素供給が不足していることを意味します。大動脈解離のリハビリテーション開始基準では、酸素飽和度は90%以上(多くは95%以上が目標)が求められます。この状態でのリハビリは心肺機能に大きな負担をかけ、危険です。正しくは:酸素飽和度〈SpO₂〉90%以上選びやすい理由:慢性呼吸器疾患患者の許容範囲と混同する可能性がありますが、急性期の大動脈解離ではより高い基準が適用されます。混同注意:COPDなど慢性呼吸器疾患患者の目標SpO₂と混同する。
- 5. 吸入酸素濃度0.7(70%)は、高濃度の酸素投与が継続されている状態であり、呼吸状態が安定していないことを示唆します。リハビリテーションを開始できる状態では、吸入酸素濃度は一般的に0.4(40%)以下、または室内気(0.21)に近い状態が望ましいとされています。高濃度の酸素を必要とする場合は、全身状態が不安定であり、リハビリは延期すべきです。正しくは:吸入酸素濃度〈FiO₂〉0.4以下選びやすい理由:高濃度酸素が供給されているから安全だと誤解する学生がいるかもしれませんが、これは重症度を示す指標です。混同注意:酸素投与によってSpO₂が維持されていれば良いと考えるが、そのために必要なFiO₂の高さが問題。
国試ポイント
本問題は、大動脈解離などの循環器疾患の急性期におけるリハビリテーション開始基準に関する知識を問うものです。特に、具体的なバイタルサインの数値と、それが示す患者の全身状態の評価能力が試されます。ガイドラインに明記されている具体的な数値基準を正確に理解しているかが重要です。
混同注意
各バイタルサインの『正常値』や『許容範囲』と、『リハビリ開始に安全な基準』とを混同しやすい。特に、活動時や運動負荷時の基準と安静時/開始時基準の違い、また慢性疾患の許容範囲との違いを誤解しやすい。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、具体的な数値だけでなく、なぜその数値が安全基準とされるのかという病態生理学的根拠や、他の循環器疾患(心筋梗塞、心不全など)におけるリハビリ開始基準との比較検討を問われる可能性があります。また、リハビリ開始後のモニタリング基準や、中止基準なども合わせて理解しておくべきです。
関連知識
大動脈解離の病態生理、急性期管理(血圧・心拍数管理)、RASS以外の意識レベル評価スケール(JCS, GCS)、酸素療法の目的とリスク、心臓リハビリテーションの段階と適応。