下肢の深部静脈血栓症により塞栓をきたすことが最も多い臓器はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
下肢の深部静脈で形成された血栓は、静脈系の血流に乗って上行し、最終的に右心房、右心室を経て肺動脈に到達します。このため、深部静脈血栓症による塞栓症は、多くの場合、肺動脈を閉塞する肺血栓塞栓症として発症します。
選択肢ごとの解説
- 1. 下肢の深部静脈から生じた塞栓は、静脈血流に乗って心臓の右心系を経て肺動脈へ向かうのが一般的な経路です。そのため、直接脳動脈へ到達することは極めて稀です。脳塞栓症は、心臓内の血栓(心房細動など)や頸動脈の動脈硬化プラークが剥がれることで生じることが多いです。正しくは:脳は、通常、動脈系由来の血栓や心臓由来の血栓によって塞栓症を起こすことが多い。選びやすい理由:脳は生命維持に不可欠な重要な臓器であり、血栓症による影響が大きいため、反射的に選択肢として有力だと感じやすいかもしれません。混同注意:静脈系の塞栓と動脈系の塞栓が辿る経路の違いを混同しやすいです。また、卵円孔開存がある場合の奇異性塞栓症と誤って結びつける可能性もありますが、これは「最も多い」ケースではありません。
- 2. 正解。下肢の深部静脈に形成された血栓は、静脈血流に乗って下大静脈を上行し、右心房、右心室を経て肺動脈へと送り込まれます。その結果、肺動脈やその分枝を閉塞し、肺血栓塞栓症を引き起こします。これが下肢深部静脈血栓症による塞栓症で最も頻繁に見られる病態です。
- 3. 下肢の深部静脈血栓から生じた塞栓が肝臓に到達するためには、まず門脈系に入るか、あるいは全身循環から肝動脈に入る必要があります。しかし、深部静脈は門脈系とは直接繋がっておらず、全身循環を介して肝動脈に到達する可能性も低いです。肝臓に塞栓が生じる場合、多くは門脈血栓症や肝動脈の血栓症が原因です。正しくは:肝臓は、主に門脈系の血栓症や肝動脈の血栓症によって塞栓症を起こすことが多い。選びやすい理由:腹腔内の臓器であり、血流が豊富であるため、何らかの形で血栓が到達しやすいと考えてしまうかもしれません。混同注意:全身の血管系の走行と、特定の臓器への血流供給経路(例: 門脈循環と体循環)を混同しやすいです。
- 4. 下肢の深部静脈血栓は、右心房・右心室を通過しますが、心臓自体を閉塞する塞栓症(心筋梗塞など)は、通常、冠動脈の血栓やアテローム硬化が原因です。下肢静脈由来の塞栓が心臓の冠動脈に入り込むことは極めて稀です。正しくは:心臓は、主に冠動脈の閉塞によって心筋梗塞などの塞栓症を起こすことが多い。選びやすい理由:心臓は血液循環の中心であり、血栓が必ず通過する部位であるため、心臓が影響を受けると誤解する可能性があります。混同注意:血栓が心臓を通過する経路と、心臓自身の機能が損なわれる塞栓症の部位(冠動脈)を混同しやすいです。
- 5. 下肢の深部静脈血栓から生じた塞栓は、肺動脈に到達するため、直接腎動脈へは向かいません。腎臓の塞栓症は、通常、心臓からの動脈系血栓(心房細動など)が腎動脈に到達するか、腎臓自体の血管病変によって生じます。正しくは:腎臓は、主に動脈系由来の血栓によって塞栓症を起こすことが多い。選びやすい理由:腎臓も血流が豊富な重要な臓器であり、機能不全が生命に直結するため、影響を受けやすいと考えてしまうかもしれません。混同注意:肺循環と体循環の経路、および静脈系からの塞栓と動脈系からの塞栓の経路を混同しやすいです。
国試ポイント
静脈系における血栓の発生部位から塞栓が到達する臓器の経路に関する基本的な解剖生理学的知識と病態生理を問う問題です。特に、下肢深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症の関連性は非常に重要であり、繰り返し出題される傾向があります。
混同注意
動脈系の塞栓症(例: 脳梗塞や心筋梗塞)の原因となる血栓と、静脈系の塞栓症(例: 肺血栓塞栓症)の原因となる血栓の発生源および到達臓器の経路の違いを混同しやすいです。また、卵円孔開存がある場合には、静脈系の血栓が動脈系に流入し、奇異性塞栓症として脳や他の臓器に塞栓を引き起こす可能性もありますが、これは「最も多い」ケースではありません。
次に同じ論点が出たら
下肢深部静脈血栓症を題材とした問題が出題された場合、塞栓が到達する臓器だけでなく、DVTの具体的な症状、診断方法(D-ダイマー、超音波検査など)、リスク因子、あるいは予防と治療に関する知識が問われる可能性が高いです。特に、長期臥床や術後の患者管理においてDVTのリスク評価と対策が重要となります。
関連知識
- 深部静脈血栓症 (DVT) のリスク因子(Virchowの3徴:血流うっ滞、血管内皮傷害、血液凝固能亢進) - 肺血栓塞栓症 (PTE) の主な症状(呼吸困難、胸痛、頻脈、低酸素血症など) - 血栓溶解療法や抗凝固療法、弾性ストッキング、下大静脈フィルターなどの治療・予防法 - 体循環と肺循環の解剖と血液の流れ - 奇異性塞栓症(paradoxical embolism)