高齢者にみられる病態のうち、低栄養と関連が少ないのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
変形性膝関節症は、主に加齢や関節への物理的負荷、肥満などが原因で発症する疾患であり、低栄養状態が直接的な原因となることは稀です。一方で、褥瘡、貧血、サルコペニア、大腿骨頸部骨折(骨粗鬆症や転倒リスクを介して)は、低栄養状態と密接に関連していることが知られています。
選択肢ごとの解説
- 1. 低栄養状態、特にタンパク質やエネルギーの不足は、皮膚の脆弱化、組織修復能力の低下、免疫機能の低下を引き起こし、褥瘡の発生リスクを高め、治癒を遅らせます。正しくは:褥瘡は低栄養と関連が深い病態である。選びやすい理由:皮膚の病態であり、一見すると低栄養との直接的な関連がわかりにくい場合もあるが、栄養状態が皮膚組織の健全性に大きく影響するため、低栄養と関連が深い。混同注意:褥瘡の直接的な原因は圧迫による血流障害ですが、その背景にある全身状態として低栄養が重要な因子であることを混同しやすい。
- 2. 鉄、葉酸、ビタミンB12などの造血に必要な栄養素が低栄養により不足すると、貧血を引き起こします。正しくは:貧血は低栄養と関連が深い病態である。選びやすい理由:貧血には様々な原因があるため、低栄養との関連がピンとこない人もいるかもしれませんが、高齢者の貧血では栄養不足型が多いです。混同注意:出血などによる貧血と、栄養不足による貧血を混同しやすいです。
- 3. サルコペニア(加齢性筋肉減少症)は、タンパク質やエネルギー摂取量の不足といった低栄養状態が主な原因の一つとなり、筋肉量の減少と筋力低下を引き起こします。正しくは:サルコペニアは低栄養と関連が深い病態である。選びやすい理由:サルコペニアは加齢に伴う現象というイメージが強いですが、栄養状態がその進行に大きく影響します。混同注意:単なる加齢による筋肉量減少と、栄養状態が関与するサルコペニアを混同しやすいです。
- 4. 正解。変形性膝関節症の主な原因は、加齢による関節軟骨の摩耗、機械的ストレス、肥満、遺伝的要因などであり、低栄養状態との直接的かつ主要な関連は確立されていません。ただし、関節炎による活動量低下が低栄養を招くことはありますが、低栄養が原因で変形性膝関節症が発症するという因果関係は薄いです。選びやすい理由:高齢者の疾患であるため、他の高齢者疾患と同様に低栄養との関連があるように思えるかもしれません。混同注意:肥満が変形性膝関節症のリスク因子であるため、肥満と対照的な低栄養を混同することは少ないですが、高齢者の全身状態の悪化を漠然と「低栄養と関係ある」と捉えてしまう可能性があります。
- 5. 大腿骨頸部骨折の主な原因は転倒と骨粗鬆症です。低栄養状態は、骨形成に必要な栄養素(カルシウム、ビタミンD、タンパク質など)の不足による骨密度の低下(骨粗鬆症)や、筋力低下による転倒リスクの増加を通じて、間接的に大腿骨頸部骨折のリスクを高めます。正しくは:大腿骨頸部骨折は低栄養と関連が深い病態である。選びやすい理由:直接的な原因は転倒や骨粗鬆症であるため、低栄養との関連が薄いと判断しがちですが、骨粗鬆症や転倒リスクには栄養状態が深く関与しています。混同注意:外傷性の骨折と、骨の脆弱性や転倒しやすい身体状況を作り出す低栄養との関連を混同しやすいです。
国試ポイント
高齢者の低栄養が引き起こす、または悪化させる病態について正しく理解しているかどうかが問われる問題です。低栄養が全身の様々な機能に影響を与えることを把握しておく必要があります。特に、直接的な関連が薄いものを見抜く能力が試されます。
混同注意
高齢者に見られる病態は多岐にわたり、一見すると低栄養と関連がありそうなもの、または間接的に関連があるものを直接的な関連と誤解しやすい点。例えば、変形性膝関節症でも活動性低下による低栄養は起こりえますが、低栄養が変形性膝関節症の主たる原因となることはありません。
次に同じ論点が出たら
次回この論点が出題された場合、高齢者の低栄養が直接的に関与する病態と、そうでない病態(または間接的な関連にとどまる病態)を区別できるか。特に、症状の一部として低栄養がみられる場合と、低栄養が疾患の主たる原因となる場合との区別が重要となるでしょう。
関連知識
高齢者の低栄養のアセスメント(MNA-SFなど)、低栄養が全身に及ぼす影響(免疫機能低下、創傷治癒遅延、筋力低下、骨密度低下など)、フレイル・サルコペニアの概念、骨粗鬆症の病態と栄養。