再発に高EE〈Expressed Emotion〉が深く関与している統合失調症患者の治療に有効なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
高EE(Expressed Emotion)は、統合失調症患者の家族が示す批判的・敵意的・情緒的過剰関与といった感情表出の度合いを指し、これが高いと患者の再発リスクが著しく増加することが知られています。この問題状況に対して、家族心理教育は、家族が統合失調症に関する正しい知識を習得し、病気への理解を深め、患者とのコミュニケーション方法や対応スキルを学ぶことで、家族内の高EEを低減させ、結果として患者の再発率を減少させることを目的とした介入です。数多くの研究でその有効性が確認されています。
選択肢ごとの解説
- 1. 自律訓練法はリラクセーションを促す技法であり、ストレス軽減には役立つ可能性がありますが、高EEという家族関係に起因する再発リスクに対して直接的な介入とはなりません。正しくは:ストレス管理やリラクセーションを目的とする介入です。選びやすい理由:ストレスが再発に関わるため、リラクセーションも重要だと誤解しやすい。混同注意:他の一般的な心理療法と混同しやすい。
- 2. 認知行動療法は、患者自身の思考や行動パターンに焦点を当てますが、高EEは主に家族内の感情交流や批判的な態度に関わるため、認知行動療法だけでは不十分です。患者本人への介入だけでは家族環境全体を変えることはできません。正しくは:患者自身の認知や行動の修正を目的とする介入です。選びやすい理由:統合失調症の症状改善に用いられるため、効果的だと誤解しやすい。混同注意:患者個人への介入である他の心理療法と混同しやすい。
- 3. 生活技能訓練(SST)は、社会生活に必要なスキル(対人関係、自己管理など)の向上を目指しますが、高EEの核心である家族の感情表出パターンには直接働きかけません。患者の生活能力向上には有効ですが、高EEによる再発予防には限定的です。正しくは:患者の社会適応能力や対人関係スキル向上を目的とする介入です。選びやすい理由:社会適応能力が向上すれば家族関係も改善すると誤解しやすい。混同注意:リハビリテーションの一環として広く用いられるため、有効だと誤解しやすい。
- 4. 正解。高EE(Expressed Emotion)は、家族からの批判、敵意、過干渉といった感情表出が高まることで、統合失調症患者の再発リスクが上昇するという概念です。家族心理教育は、家族に対して病気への理解を深め、患者との関わり方、コミュニケーションスキル、問題解決能力などを教育することで、高EEを低減し、患者のストレスを軽減し、再発を予防する効果が明確に示されています。選びやすい理由:家族への介入という点で、最も直接的に高EEにアプローチできる。混同注意:他の心理療法と異なり、家族全体への介入である点を理解しているかが問われる。
- 5. レクリエーションは気分転換やQOL向上に寄与しますが、高EEという家族の感情表出パターンに直接的に介入し、その影響を低減する効果は期待できません。治療の一部にはなりえますが、再発予防の中心的なアプローチではありません。正しくは:気分転換や社会参加を促進する活動です。選びやすい理由:患者のストレス軽減に役立つと誤解しやすい。混同注意:一般的な活動療法や余暇活動と混同しやすい。
国試ポイント
この問題は、統合失調症の再発要因として重要な概念である「高EE(Expressed Emotion)」と、それに対する最も効果的な介入法である「家族心理教育」を結びつけられるかを問うものです。病態の理解と適切な治療選択に関する知識が求められます。特に、患者個人への介入だけでなく、家族環境への介入の重要性を理解しているかを確認しています。
混同注意
高EEが家族の問題であるにもかかわらず、患者個人に焦点を当てた治療法(自律訓練法、認知行動療法、生活技能訓練など)を選んでしまう可能性があります。高EEが「家族の感情表出」に起因する再発リスクであることを明確に理解していないと、患者のストレス軽減やスキル向上だけを目的とした選択肢を選んでしまいがちです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、統合失調症の他の再発予防策(例:薬物療法のアドヒアランス向上、デイケア、就労支援など)や、高EE以外の再発要因(例:ストレス、薬の中断、幻覚妄想の残遺症状など)に関する知識が問われる可能性があります。また、高EEの具体的な内容(批判、敵意、感情的過干渉)やその測定方法についても理解しておく必要があります。
関連知識
統合失調症の再発予防には、薬物療法へのアドヒアランス向上が最も重要である他、心理社会的療法も非常に重要です。心理社会的療法には、精神療法(認知行動療法、支持的精神療法など)、生活技能訓練(SST)、作業療法、そして家族心理教育などがあります。高EEの概念は、特に統合失調症の再発予防において家族環境の重要性を示唆するもので、この概念を提唱したのはブラウンらです。