脊髄小脳変性症の患者で、歩行可能であるが伝い歩きが主であり、方向転換時に不安定となってしまう場合の歩行補助具として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
脊髄小脳変性症患者は、協調運動障害により体幹の動揺やバランス機能の低下が見られます。特に歩行において伝い歩きが主で、方向転換時に不安定となるという記述から、高い安定性を提供する歩行補助具が求められます。歩行車は四点支持で広範囲な支持基底面を提供し、前方への推進補助と高い安定性をもたらすため、この病態の患者には最も適しています。T字杖やロフストランド杖などの一本杖、四点杖は安定性が不足し、交互型歩行器は操作の協調性を要するため不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. T字杖は比較的安定性が低く、方向転換時の不安定さや伝い歩きが主である脊髄小脳変性症患者には不十分なことが多いです。正しくは:支持基底面を広げ、より高い安定性を提供する歩行補助具が適切です。選びやすい理由:一般的な歩行補助具として認知度が高いため、漠然と選んでしまう可能性があります。混同注意:軽度のバランス障害や片麻痺の患者に用いる杖と混同しやすいです。
- 2. 正解。歩行車は四点支持で安定性が高く、前方への推進力を補助し、かつ座面があるタイプであれば疲労時の休憩も可能です。方向転換時に不安定になるような中等度のバランス障害がある脊髄小脳変性症患者に適しています。選びやすい理由:自立歩行は可能であるため、大掛かりに感じるかもしれませんが、安定性確保には最も適しています。
- 3. 交互型歩行器は歩行リズムに合わせて左右を交互に動かすため、操作に一定の協調性とバランス能力を要します。脊髄小脳変性症による協調運動障害がある場合、操作が困難でかえって転倒リスクを高める可能性があります。正しくは:車輪付きで、操作が簡便な歩行補助具が適切です。選びやすい理由:歩行器全般が高い安定性を持つという認識から選ばれやすいですが、交互型は操作性に課題があります。混同注意:固定型歩行器や歩行車と混同し、一概に「歩行器=安定」と判断しやすいです。
- 4. ウォーカーケインはT字杖よりは支持基底面が広いものの、四点杖の一種であり、歩行車ほどの高い安定性はありません。特に方向転換時の不安定さを補うには不十分です。正しくは:より広範囲な支持基底面と安定性を提供する歩行補助具が必要です。選びやすい理由:杖より安定性があるため、中途半端な症状に適用できると誤解しやすいです。混同注意:通常の杖と歩行器の中間的な存在として、その適用範囲を誤解しやすいです。
- 5. ロフストランド杖は前腕支持型で、T字杖よりは支持性が高いものの、依然として片手での使用が基本であり、両下肢の支持性を確保する能力は限られます。方向転換時の不安定さや伝い歩きを主とする患者には不十分です。正しくは:両手で支持でき、より安定性の高い歩行補助具が適切です。選びやすい理由:T字杖よりも安定性が高いイメージがあるため、ある程度のバランス障害には対応できると考えてしまいがちです。混同注意:T字杖より重度な障害に使うという点で、適切な安定性を提供すると誤解しやすいです。
国試ポイント
脊髄小脳変性症による協調運動障害とバランス障害の特性を理解し、その症状に最も適した歩行補助具を選択できるかどうかが問われています。特に、単に「歩ける」というだけでなく、伝い歩きや方向転換時の不安定さといった具体的な症状から、必要な安定性レベルを判断する能力が重要です。
混同注意
歩行補助具の安定性の高さの順序(杖<四点杖<ロフストランド杖<歩行器)を正確に把握できていないと、選択を誤りやすいです。また、歩行器の種類(固定型、交互型、歩行車)とそれぞれの特徴・適応も混同されやすい点です。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の論点が出題された場合、患者の具体的な歩行能力やバランスレベル(例:独歩可能、伝い歩き、見守り歩行、一部介助、全介助など)と、身体機能の状態(例:筋力、協調性、感覚、認知機能)を詳細に把握し、最もサポート力の高い選択肢から検討していく視点が重要です。
関連知識
脊髄小脳変性症の病態生理(協調運動障害、平衡機能障害、構音障害など)、各種歩行補助具の構造と機能、それぞれの適応と禁忌。