脊髄損傷による対麻痺患者に対して立位・歩行練習を行う目的として誤っているのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
脊髄損傷による対麻痺患者に対する立位・歩行練習は、痙縮の軽減、褥瘡予防、骨粗鬆症予防、消化管運動促進、循環機能改善、心理的効果など多岐にわたる目的で行われます。しかし、異常痛(特に神経因性疼痛)の抑制は、立位・歩行練習の直接的または主要な目的とは言えません。神経因性疼痛は神経損傷に起因するため、その管理には薬物療法や神経ブロック、精神的サポートなど専門的なアプローチが中心となります。むしろ、不適切な立位・歩行練習は疼痛を悪化させる可能性すらあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 立位・歩行練習は、下肢に荷重をかけることで伸張反射を抑制し、痙縮の軽減に寄与すると考えられています。正しくは:筋緊張の亢進(痙縮)を和らげることは、立位・歩行練習の適切な目的の一つです。選びやすい理由:痙縮が強すぎる場合は立位・歩行練習が困難になるため、減弱が目的であることを理解していれば選択肢としては正しいと判断しやすいです。混同注意:痙縮の評価や治療法全般と混同しがちですが、立位・歩行練習が痙縮に与える影響に焦点を当てることが重要です。
- 2. 立位・歩行練習により体位変換が行われ、臀部など特定部位への持続的な圧迫が軽減されるため、褥瘡予防に効果的です。正しくは:床ずれ(褥瘡)の発生を未然に防ぐことは、立位・歩行練習の適切な目的の一つです。選びやすい理由:脊髄損傷患者は感覚障害があるため褥瘡リスクが高く、体位変換や運動による予防の重要性は広く知られています。混同注意:褥瘡予防の他の手段(体圧分散寝具、スキンケアなど)と混同することはありませんが、立位・歩行練習もその一環であることを理解しているかが問われます。
- 3. 正解。立位・歩行練習は、神経因性疼痛などの異常痛を直接的に抑制する効果は限定的です。むしろ、過負荷や不適切な運動は疼痛を悪化させる可能性もあります。異常痛の管理には薬物療法や他の専門的なアプローチが主となります。正しくは:異常痛の抑制は立位・歩行練習の直接的な目的ではなく、むしろ他の治療法が必要です。選びやすい理由:リハビリテーション全体が疼痛管理に関わるため、一見すると適切な目的のように思えるかもしれません。しかし、立位・歩行練習が異常痛を「抑制」する直接的な効果は証明されていません。混同注意:疼痛全般の緩和と混同しやすいですが、ここでは「異常痛(神経因性疼痛など)」に限定されています。筋骨格系の疼痛であれば、運動療法が奏功する場合もありますが、脊髄損傷後の神経因性疼痛には効果が薄いです。
- 4. 立位・歩行練習による下肢への荷重は、骨への物理的刺激となり、骨形成を促進し、骨吸収を抑制することで骨粗鬆症の予防に繋がります。特に脊髄損傷患者では免荷により骨粗鬆症が進行しやすいため重要です。正しくは:骨密度の低下(骨粗鬆症)を防ぐことは、立位・歩行練習の適切な目的の一つです。選びやすい理由:骨粗鬆症は脊髄損傷患者の合併症として有名であり、荷重負荷が予防に有効であることは広く知られています。混同注意:骨粗鬆症の薬物療法など、他の治療法と混同することはありませんが、運動療法による効果のメカニズムを理解しているかが重要です。
- 5. 立位・歩行練習などの身体活動は、腹筋群の活動を促し、重力の助けも借りて腸の蠕動運動を促進し、便秘の改善など消化管機能の向上に寄与します。正しくは:消化器系の働きを活発にすることは、立位・歩行練習の適切な目的の一つです。選びやすい理由:活動量の増加が内臓機能に良い影響を与えることは一般常識として理解しやすいため、正しい目的であると判断しやすいです。混同注意:消化器症状に対する薬物療法や食事療法と混同することはありませんが、運動の効果範囲として認識しているかが問われます。
国試ポイント
脊髄損傷患者に対するリハビリテーションの目的とその効果を理解しているか、特に「異常痛の抑制」が運動療法の直接的な目的とは異なることを正確に識別できるかが問われる問題です。多岐にわたる運動療法の効果の中から、最も直接的でない、あるいは効果が薄い目的を選ぶ形式になっています。
混同注意
一般的な「疼痛緩和」と脊髄損傷における「異常痛(神経因性疼痛)」の違い。運動療法が一般的な筋骨格系疼痛には有効な場合が多いのに対し、神経因性疼痛への効果は限定的であるという点が混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、運動療法が特定の合併症に対してどのような生理学的メカニズムで効果を発揮するのか、また、直接的な効果が期待できない合併症はどれかを問われる可能性があります。また、多岐にわたるリハビリテーション介入の中から、特定の目的達成のために最も適切な介入を選ぶ形式も考えられます。
関連知識
脊髄損傷の合併症(痙縮、褥瘡、骨粗鬆症、神経因性疼痛、排泄障害、呼吸障害、循環障害など)、各合併症に対するリハビリテーションアプローチ、運動療法の生理学的効果(荷重刺激による骨への影響、活動による内臓機能への影響など)。