筋萎縮性側索硬化症の進行により非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法を適応すべき数値はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、呼吸筋の筋力低下により肺胞換気が不十分となり、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)が上昇するII型呼吸不全を呈します。PaCO₂が50mmHgを超える慢性的な高二酸化炭素血症はNPPV導入の重要な適応基準であり、60mmHgという数値はすでに重度の高二酸化炭素血症を示しているため、NPPVの積極的な導入が検討されます。
選択肢ごとの解説
- 1. PaO₂が80mmHgは正常範囲内であり、呼吸不全の指標とはなりません。NPPVの適応となるのは、酸素化能の低下がより顕著な場合です。正しくは:PaO₂が60mmHg未満(I型呼吸不全)などの状態であれば、NPPV導入を検討する可能性があります。選びやすい理由:酸素分圧が低いと呼吸不全という認識から選びやすいですが、80mmHgは通常NPPVの即時適応とはなりません。混同注意:酸素化の指標であるため、呼吸不全と関連づけやすいですが、基準値と適応基準の具体的な数値が混同されやすいです。
- 2. 正解。筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、呼吸筋麻痺により肺胞換気が低下し、PaCO₂が上昇するII型呼吸不全を呈します。PaCO₂が45mmHg以上、特に50mmHgを超える慢性的な高二酸化炭素血症はNPPV導入の重要な適応基準の一つであり、60mmHgは非常に高い数値で、NPPV導入が強く推奨されます。選びやすい理由:高二酸化炭素血症は呼吸不全の明確な指標であるため、ALS患者において換気補助が必要となる状況として適切と判断できます。
- 3. 睡眠中のSpO₂が94%は、通常、NPPVの導入を検討するほどの顕著な低酸素血症とは判断されません。NPPVの適応となるのは、より重度の低酸素状態が継続する場合です。正しくは:睡眠中のSpO₂が90%未満、または90%未満の状態が長時間続く場合に、NPPV導入を検討する目安となります。選びやすい理由:睡眠中のSpO₂低下はALS患者でよく見られる問題ですが、94%という数値は比較的軽度であり、即時適応とはなりにくいです。混同注意:睡眠時無呼吸症候群など、他の呼吸器疾患におけるSpO₂低下の基準値と混同しやすいです。
- 4. 最大吸気圧(MIP)は呼吸筋力の指標の一つですが、75cmH₂Oは比較的良好な値であり、通常、NPPVの導入を直ちに決定するほどではありません。NPPVの適応となるのは、MIPがより低下している場合です。正しくは:MIPが40cmH₂O以下、あるいはさらに低く20~30cmH₂O程度になった場合がNPPV導入の一つの目安となります。選びやすい理由:MIPは呼吸筋機能の重要な指標であるため、ALSの進行度合いと関連付けて選びやすいですが、適応基準となる具体的な数値の理解が必要です。混同注意:最大吸気圧と最大呼気圧、肺活量などの呼吸機能指標の基準値や臨床的意義が混同されやすいです。
- 5. 努力性肺活量(%FVC)が85%は、正常範囲内であり、呼吸機能が十分に保たれていることを示します。NPPVの適応となるのは、FVCがより顕著に低下している場合です。正しくは:FVCが予測値の50%未満、特に30%未満になった場合がNPPV導入の重要な目安となります。選びやすい理由:FVCは呼吸機能の指標としてよく使われるため、ALSの病態評価と関連付けて選びやすいですが、85%という数値はNPPVの適応とはなりません。混同注意:FVCとVC(肺活量)、または%FVCの低下が呼吸不全につながるという一般的な理解と、NPPVの具体的な適応基準が混同されやすいです。
国試ポイント
筋萎縮性側索硬化症(ALS)における非侵襲的陽圧換気(NPPV)の適応基準、特に呼吸不全の種類とそれを評価するための血液ガス分析の重要性(PaCO₂の上昇)を問う問題です。他の呼吸機能検査の指標や正常値との比較も重要です。
混同注意
PaO₂とPaCO₂の正常値と異常値の区別、呼吸機能検査(FVC、MIPなど)の正常値とNPPV適応基準値の具体的な数値、I型呼吸不全とII型呼吸不全の鑑別基準が混同されやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
今後ALSのNPPV適応が出題される場合、PaCO₂以外の指標(FVCや睡眠時低換気を示す指標、自覚症状など)と組み合わせて問われる可能性や、NPPV導入後の管理、またはNPPVが禁忌となる状況などが問われる可能性があります。
関連知識
ALSの病期分類、呼吸筋麻痺の進行と呼吸機能への影響、NPPVの原理と効果、NPPV以外の呼吸管理方法(咳介助装置、気管切開など)、II型呼吸不全の診断基準。