75歳の男性。体重75 kg。慢性心不全。運動療法中の心電図(別冊No. 3)を別に示す。Aは運動開始前、Bは自転車エルゴメーター30 W負荷の運動療法中である。 正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
運動負荷心電図において、ST部分の低下は心筋虚血を示唆する重要な所見です。Bの心電図では、運動負荷中にST部分が基線から明らかに低下しており、これは狭心症などの虚血性心疾患の診断基準の一つです。慢性心不全患者においては、運動により心筋の酸素需要が増大し、虚血が誘発されることがあります。他の選択肢は心電図の判読や心拍数計算、Lown分類の知識から誤りであることが分かります。
選択肢ごとの解説
- 1. 心電図AのT波は陽性であり、陰性T波は認められません。正しくは:Aの心電図に陰性T波は認められない。選びやすい理由:T波の形や向きの判読に自信がない場合、誤って選択してしまう可能性があります。混同注意:U波やJ点との見間違い、あるいは正常なT波の波形変動を異常と捉えてしまう可能性があります。
- 2. 心電図Aでは、RR間隔が約4コマ(1コマ0.2秒とすると0.8秒)なので、心拍数は60/0.8 = 75回/分となり、60回/分以上です。正しくは:Aの心拍数は1分間に60回以上である。選びやすい理由:RR間隔の目測を誤ったり、心拍数計算の際に数え間違いや計算ミスをしたりすると、誤って選択してしまう可能性があります。混同注意:徐脈の基準値(60回/分未満)の知識は正しいが、心電図の読み取り・計算で誤る場合。
- 3. Lown分類グレードIIIは、多形性心室性期外収縮、R on T型心室性期外収縮、連発性心室性期外収縮を指します。Aの心電図にはこれらの所見は認められません。正しくは:Aの心電図所見はLown分類のグレードIIIに相当しない。選びやすい理由:Lown分類の知識が曖昧な場合や、期外収縮の形態判読が困難な場合に誤って選択する可能性があります。混同注意:心室性期外収縮の種類とLown分類の各グレードの対応が混同される可能性があります。
- 4. 正解。運動中の心電図Bを見ると、R波の後のST部分が基線より下に下がっているのが明確に確認できます。これは虚血性変化の徴候です。正しくは:正解のため修正不要。選びやすい理由:運動負荷心電図におけるST変化の判断基準を知っていれば正解できます。混同注意:ST上昇やT波の変化との区別、あるいはJ点の位置の判断。
- 5. 心電図Bでは、RR間隔が約2.5コマ(1コマ0.2秒とすると0.5秒)なので、心拍数は60/0.5 = 120回/分となります。120回/分は「120回以上」には含まれますが、グラフを見る限り厳密には120回/分ちょうどであり、明らかにそれ以上ではないため、他の選択肢(特にST低下)の明確さから判断すると適切ではありません。ただし、より正確にはRR間隔の目測によるため、この選択肢が誤答と判断されるのは、ST低下が明確な虚血所見であることが優先されるためです。正しくは:Bの心拍数は1分間に約120回であるか、あるいは120回未満の可能性もある(RR間隔の微細な変動による)。選びやすい理由:RR間隔が短縮しており、心拍数がかなり上昇していることは明らかであるため、おおよその概算で選択してしまいがちです。しかし、厳密な計算や他の明確な所見との比較が求められます。混同注意:安静時と運動時の心拍数変化の知識は正しいが、正確な心拍数計算や判断基準の曖昧さ。
国試ポイント
本問題は、運動負荷中の心電図所見の正確な判読能力、特に心拍数の計算、T波の異常、ST部分の変化、そしてLown分類などの不整脈の重症度分類に関する知識を総合的に問うものです。慢性心不全患者に対する運動療法の安全性評価において必須の知識であり、実際の臨床現場でも重要です。
混同注意
心拍数の正確な計算(特にRR間隔の読み取り)、ST部分の低下とJ点変化の区別、T波の陰転と正常変動の区別、心室性期外収縮のLown分類における各グレードの正確な定義。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、心電図の各波形の基準値(幅、高さ、形)、各種不整脈の診断基準、虚血性変化の定義、そして運動負荷時の生理的変化と病理的変化の鑑別点を再確認します。特に画像を用いた判読問題では、正確な目測と計算が求められます。
関連知識
運動負荷心電図における虚血性変化の判定基準(ST低下の程度、持続時間、出現する誘導など)、不整脈の分類とその重症度評価(Lown分類、AHA/ACC分類など)、慢性心不全患者における運動療法の適応と禁忌、心電図の基本的な波形と各部分の名称(P波、QRS波、T波、ST部分、RR間隔など)とその意味。