閉塞性動脈硬化症の運動療法を行う場合、収集すべき医学情報として最も重要なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
閉塞性動脈硬化症の運動療法では、下肢の血流状態を正確に把握することが最も重要です。足関節上腕血圧比(ABI)は、上腕と足関節の血圧を比較することで下肢動脈の閉塞の程度を評価する簡便かつ客観的な指標であり、診断、重症度分類、治療効果判定に広く用いられます。ABIの値が低いほど下肢の血流障害が重度であることを示し、運動療法の適応や強度、安全性を判断する上で不可欠な情報となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 胸部CTは主に心臓や肺、大血管の形態学的評価に用いられますが、閉塞性動脈硬化症の下肢血流障害の重症度を直接評価する指標としては最も重要ではありません。正しくは:閉塞性動脈硬化症における下肢の動脈硬化の程度や狭窄部位の評価には、下肢血管エコーやMRAなどがより直接的な情報となります。選びやすい理由:動脈硬化が全身疾患であるため、心臓病などの合併症評価には有用ですが、下肢の運動療法のリスク評価や効果判定には優先度が低いです。混同注意:全身の動脈硬化の評価として、なんとなく必要そうだと感じてしまう可能性があります。
- 2. 脊椎MRIは主に脊髄や椎間板、神経根などの評価に用いられ、下肢の閉塞性動脈硬化症による血流障害の重症度を把握するための情報としては最も重要ではありません。正しくは:下肢痛の原因が神経性間欠性跛行(脊柱管狭窄症など)でないことを鑑別する際には有用ですが、ASO自体の評価とは異なります。選びやすい理由:閉塞性動脈硬化症の症状である間欠性跛行は、脊柱管狭窄症の症状と類似しているため、鑑別のために必要だと誤解しやすいです。混同注意:神経性間欠性跛行と血管性間欠性跛行の鑑別に必要な情報と混同しやすいです。
- 3. 筋電図検査は神経や筋肉の機能を評価するものであり、閉塞性動脈硬化症による下肢の血流障害の重症度や運動耐容能を判断する主要な指標ではありません。正しくは:下肢の筋力低下や感覚障害が神経原性か血管性かを鑑別する際には補助的に用いられることがありますが、ASOの重症度評価には他の検査が優先されます。選びやすい理由:下肢の機能評価の一環として、なんとなく必要そうだと感じてしまう可能性があります。混同注意:神経障害による筋力低下や感覚障害の評価と混同しやすいです。
- 4. 正解。足関節上腕血圧比(ABI)は、閉塞性動脈硬化症の診断、重症度評価、および予後予測に非常に重要な指標です。下肢の血流障害の程度を非侵襲的に数値化できるため、運動療法の適応判断やリスク評価、効果判定に不可欠な情報となります。正しくは:ABIは客観的な数値で下肢動脈の閉塞・狭窄の程度を示すため、運動療法の可否や強度設定の基準となります。
- 5. 単純エックス線は主に骨や関節の形態的異常(骨折、変形性関節症など)を評価するものであり、血管の狭窄や閉塞による血流障害の程度を直接把握するための情報としては最も重要ではありません。正しくは:石灰化の評価には役立つことがありますが、血流障害の重症度を直接評価するには不十分です。ASOの診断や重症度評価には、ABIや血管エコー、MRAなどが優先されます。選びやすい理由:間接的に血管の石灰化が見られることがありますが、下肢の血流状態や運動耐容能を直接評価するものではないため、優先度は低いです。混同注意:下肢の他の整形外科的疾患(変形性股関節症など)との鑑別や合併症評価に必要な情報と混同しやすいです。
国試ポイント
閉塞性動脈硬化症(ASO)に関する問題は頻出であり、特に診断や重症度評価に用いられる主要な検査法とその意義を理解しているかが問われます。運動療法を行う上でのリスク管理や効果判定に必要な情報に焦点を当てた出題形式です。他の疾患との鑑別や全身合併症の評価に必要な検査と混同しないことが重要です。
混同注意
脊柱管狭窄症による神経性間欠性跛行とASOによる血管性間欠性跛行の鑑別、または心血管疾患の全身評価に必要な検査(例:心電図、胸部CT)と混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、閉塞性動脈硬化症の『診断・重症度評価』『運動療法のリスク管理・効果判定』に直接関連する検査、特に血流状態を反映する指標が問われる可能性が高いと判断します。また、類似症状を呈する他疾患(脊柱管狭窄症など)との鑑別点も注意が必要です。
関連知識
閉塞性動脈硬化症の病態生理、血管性間欠性跛行の特徴、Fontaine分類やRutherford分類による重症度評価、運動療法の効果(側副血行路の発達促進、内皮機能改善など)、運動療法の禁忌事項(安静時疼痛、潰瘍、壊死、重症心疾患など)。また、ABIの基準値(正常:0.91-1.30、ASO:<0.90)や、偽性高値(糖尿病患者など)についても理解しておく必要があります。