脊髄損傷者(完全麻痺)が両側の短下肢装具と杖によって安全に屋外歩行が可能となる最も上位の機能残存レベルはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
脊髄損傷で短下肢装具と杖を使って安全に屋外歩行が可能となるためには、膝関節の安定性が不可欠です。この安定性を担う大腿四頭筋の機能が残存する最も上位のレベルはL4(大腿四頭筋はL2~L4支配)です。L4レベルでは、大腿四頭筋が機能するため膝折れを防げます。足関節の底屈筋(下腿三頭筋)は機能しないため、短下肢装具で足関節を固定し、杖でバランスを補うことで安全な歩行が可能となります。
選択肢ごとの解説
- 1. Th6レベルの損傷では、体幹筋の機能が十分ではなく、短下肢装具と杖のみでの安定した屋外歩行は極めて困難です。正しくは:このレベルでは車椅子使用が一般的で、歩行訓練を行う場合でも重度の装具と多くの補助具が必要です。選びやすい理由:脊髄損傷のレベルと運動機能の関連性が曖昧な場合に、高位の損傷でも歩行が可能と誤解する可能性があります。混同注意:装具を使用すれば、どのような高位損傷でも歩けるという誤解と混同しやすいです。
- 2. Th10レベルの損傷では、腹筋群の機能が不十分なため、体幹の安定性が低く、短下肢装具と杖のみでの安全な屋外歩行は難しいです。正しくは:体幹の安定性が不十分なため、歩行補助具や装具だけでは安全な屋外歩行には至りません。股関節を固定する長下肢装具や、重心移動を補助する装具が必要になることが多いです。選びやすい理由:体幹の筋力がある程度残存しているように見えるため、歩行能力があると誤解しやすいです。混同注意:脊髄損傷のレベルと体幹機能の関連性、および歩行に必要な体幹の安定性の理解が不十分な場合と混同しやすいです。
- 3. L2レベルの損傷では、腸腰筋が一部機能しますが、大腿四頭筋の機能が不十分なため、膝関節の安定性が保てず、短下肢装具と杖のみでは安全な屋外歩行は困難です。正しくは:大腿四頭筋の機能不全を補うために、膝継手付きの長下肢装具が必要になります。選びやすい理由:股関節屈曲が可能であるため、下肢全体の機能残存を過大評価しやすいです。混同注意:L2レベルで股関節屈曲筋が機能することと、膝関節伸展筋が機能することを混同しやすいです。
- 4. 正解。L4レベルの損傷では、大腿四頭筋(膝関節伸展)が機能するため、膝関節の安定性を保つことができます。これにより、短下肢装具で足関節の不安定性を補い、杖でバランスを補助することで、安全な屋外歩行が可能になります。下腿三頭筋(足関節底屈)は機能しないため、短下肢装具が必要です。正しくは:L4レベルは、短下肢装具と杖での屋外歩行が可能になる最も上位のレベルとされています。選びやすい理由:特にありません。このレベルは歩行能力の基準として重要です。
- 5. S1レベルの損傷では、膝関節伸展筋(大腿四頭筋)はもちろん、足関節底屈筋(下腿三頭筋)も機能します。このため、短下肢装具や杖なしでも、あるいは軽度の補助で歩行が可能になる場合が多いです。問題文の「最も上位の機能残存レベル」という条件に当てはまりません。正しくは:S1レベルは、短下肢装具と杖によって安全な屋外歩行が可能になるレベルよりも下位(より高機能)であるため、この問題の条件には適合しません。もっと軽い装具や杖なしでも歩行が期待できます。選びやすい理由:脊髄損傷レベルが低ければ低いほど歩行能力が高いという一般的な理解から、最も低位のS1を選びたくなるかもしれませんが、「最も上位」という条件を見落とすと誤答につながります。混同注意:「最も上位」という条件の解釈と、S1レベルで残存する機能の程度を混同しやすいです。
国試ポイント
脊髄損傷の損傷レベルと残存機能、特に歩行能力との関連を問う問題です。各レベルでどの筋肉が機能し、どのような装具や補助具が必要になるかを正確に理解しているかが重要です。特に、歩行に必要な体幹や下肢の安定性に注目させる点がポイントです。「最も上位」という条件を見落とさないよう注意が必要です。
混同注意
脊髄損傷の分類(完全麻痺/不完全麻痺)、各レベルで残存する主要な筋群の名称と神経支配、そしてそれらに対応する装具の種類や歩行能力が混同されやすいです。特に、体幹の安定性と下肢の安定性の両方が歩行には必要であることを理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、損傷レベルと歩行能力だけでなく、車椅子での生活やADL能力に関する問題、あるいは特定のマッスルテスト結果から損傷レベルを推測させる問題が出題される可能性があります。また、不完全損傷の場合の機能回復の可能性や、リハビリテーションプログラムについても問われるかもしれません。
関連知識
各脊髄神経レベルにおける主要な運動機能(キーマッスル)、それに応じたアメリカ脊髄損傷協会国際標準神経学的分類(ASIA Impairment Scale: AIS)の理解、および各種装具(短下肢装具、長下肢装具、股関節継手付き装具など)の適応についても関連知識として重要です。