病気の解説
先天性副腎過形成症
別名:先天性副腎皮質過形成、先天性副腎皮質過形成症
緊急性の高い症状
塩分を失うタイプ(塩類喪失型)の赤ちゃんや子どもでは、ショック状態(副腎クリーゼ)に陥ることがあります。次のような様子があれば、ためらわずに救急を含めてすぐ医療機関に連絡してください。
- 生まれて数日〜数週間のうちに、ミルクの飲みが悪い、吐く、下痢、体重が減る、ぐったりして脱水が疑われる
- 意識がぼんやりしている、ひどく機嫌が悪い、脈が速い、呼びかけへの反応が乏しい
- 治療中の子どもが、高い熱・けが・手術などで体に大きな負担がかかっているとき
出典:NICHD(米国国立小児保健発達研究所)、MedlinePlus Genetics
当てはまるときは、ためらわず 119 または救急外来へ。
受診の目安
- 新生児マススクリーニング(生まれてすぐの血液検査)で再検査や精密検査を勧められたとき
- 赤ちゃんの外性器の形について、出生時に医師から説明を受けたとき
- 幼い年齢で、陰毛やわき毛が生える、声が低くなる、急に背が伸びる、ひどいにきびが出るなど、思春期のような変化が早く始まったとき
- 思春期以降に、月経が不規則・来ない、毛深さが目立つ、こめかみから髪が薄くなる、妊娠しにくいといった状態が続くとき
子どもは小児科(ホルモンを専門とする小児内分泌の医師)、大人は内分泌内科や婦人科が相談先になります。こうした変化はほかの原因でも起こるため、症状だけで病名を決めることはできず、血液中のホルモンの検査などで確かめます(NICHD)。
基本
先天性副腎過形成症とは
腎臓の上にある副腎は、体を守るホルモンを作っています。先天性副腎過形成症は、副腎でホルモンを作る仕組みが生まれつきうまく働かない遺伝性の病気の総称です(NICHD)。コルチゾールや、塩分と水分の調整にかかわるアルドステロンが足りなくなる一方、男性ホルモン(アンドロゲン)が多く作られすぎることがあります(NICHD)。原因の大部分は「21-水酸化酵素」という酵素の不足によるものとされています(MedlinePlus Genetics)。
主な症状
重症度によって、生まれてすぐ症状が出る「古典型」と、成長してから気づかれる軽い「非古典型」に分けられます(NICHD)。
- 塩分を失うタイプ(古典型の重いもの):尿に塩分が大量に出てしまい、生後早い時期に脱水、飲みの悪さ、嘔吐、体重減少などが起こります。血圧や血糖が下がったり、不整脈が出たりすることもあり、命にかかわる場合があります(NICHD)(MedlinePlus Genetics)。
- 塩分の喪失が目立たないタイプ(古典型):命にかかわる塩分喪失はないものの、男性ホルモンの影響が出ます(NICHD)。
- 男性ホルモンが多いことによる変化:女の赤ちゃんでは外性器が男女どちらとも判別しにくい形になることがあります(子宮や卵巣は通常どおり)。男女とも幼いうちから体毛が増える、急に背が伸びるなどの変化がみられ、子どものころは背が高くても、大人になると家族より背が低めになりやすいとされます(NICHD)(MedlinePlus Genetics)。
- 非古典型:子ども時代から大人になるまでのどこかで、にきび、早い思春期、月経不順、毛深さ、妊娠しにくさなどとして現れます。ほとんど症状を感じない人もいます(NICHD)。
原因・なりやすい要因
多くは、21-水酸化酵素の設計図にあたる CYP21A2 という遺伝子の変化が原因です。酵素が足りないと、コルチゾールやアルドステロンになるはずだった材料がたまり、男性ホルモンに作り替えられてしまいます(MedlinePlus Genetics)。酵素がどれだけ働いているかによって重さが変わるとされます(MedlinePlus Genetics)。
遺伝の形式は常染色体潜性(劣性)遺伝で、両親から変化した遺伝子を1つずつ受け継いだときに発症します。両親は変化を1つだけ持つ「保因者」で、ふつうは症状がありません(MedlinePlus Genetics)。同じ両親から次の子が生まれる場合、病気をもつ確率は4分の1とされます(NICHD)。
検査と診断
診断
- 新生児のスクリーニング:生まれてすぐの血液検査で見つかることがあり、陽性の場合は追加の検査で確かめます。スクリーニングで異常がなくても、外性器の形などから強く疑われるときはさらに調べます(NICHD)。
- 非古典型:新生児のスクリーニングでは見つからず、症状が出てから、家族歴の確認、診察、血液や尿のホルモン測定、遺伝子検査などで診断されます。子どもでは、骨の成熟が年齢より進んでいないかをX線で確認することもあります(NICHD)。
- 妊娠中の検査:きょうだいにこの病気の子がいる場合など、型によっては胎児の遺伝子検査ができることがあります(NICHD)。
治療
治療
- ホルモンを補う薬:古典型では、生まれてすぐから足りないホルモンを薬で補い、治療は生涯続きます。子どもでは主にヒドロコルチゾンが使われ、アルドステロンの代わりになる薬(フルドロコルチゾン)を併用します。塩分を失うタイプでは食塩の補給が役立つことがあります(NICHD)。
- 体に負担がかかるときの増量:高熱、手術、大きなけがのときは体がより多くのコルチゾールを必要とするため、薬を増やす必要が出ることがあります。注意深く治療していても、病気やけがの際に副腎クリーゼを起こすおそれがあるとされます(NICHD)。
- 量の調整:必要な量は成長や年齢で変わります。多すぎると体重増加、成長の遅れ、顔が丸くなる、血圧や血糖の上昇などが起こることがあるため、定期的に見直します。自己判断で薬をやめると症状が戻ります(NICHD)。
- 手術:外性器の形が尿の出方に影響する場合などに検討されます。時期は家族と医療者が相談して決め、心理的な支援も助けになるとされます(NICHD)。
- 非古典型:症状がなければ治療しないこともあり、症状があれば少量の薬を使います(NICHD)。
日常生活の注意
薬の量や体調が悪いときの対応は、主治医の指示を最優先にしてください。
- 古典型の人は、副腎の機能が足りずヒドロコルチゾンが必要であることを示す医療用のブレスレットやネックレスを身につけることが勧められています(NICHD)。
- 緊急時に備え、本人や家族がヒドロコルチゾンの注射のしかたを習っておくことが勧められています(NICHD)。
- 薬の副作用が疑われる変化に気づいたら、早めに主治医に伝えます(NICHD)。
小児科で扱うほかの病気
出典
NICHD「About Congenital Adrenal Hyperplasia」(症状・診断・治療の各ページを含む) / MedlinePlus Genetics「21-hydroxylase deficiency」
内容の確認日:2026-10-13(次回確認予定 2027-04-13)。複数の公的情報源の事実をもとに medimichi が独自にまとめています。
この記事は一般的な医療情報の解説で、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください。緊急時は 119 / 医療機関へ。