左心不全症例の肺の特殊染色標本(別冊No. 6)を別に示す。染色法はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
左心不全が進行すると肺うっ血が生じ、肺胞毛細血管から赤血球が漏出し、肺胞マクロファージがこれを貪食してヘモジデリン(鉄含有色素)を形成します。このヘモジデリンは「心臓病細胞」とも呼ばれ、肺組織中に蓄積します。ベルリンブルー染色は、組織中の二価鉄イオン(Fe2+)を検出する特異的な染色法であり、ヘモジデリン中の鉄成分を青色に染め出します。したがって、下図の青く染まった顆粒はヘモジデリンを示唆しており、この染色法がベルリンブルー染色であることがわかります。
選択肢ごとの解説
- 1. アルシアンブルー染色は、酸性ムコ多糖類(例:粘液、結合組織の基質)の検出に用いられる染色法であり、ヘモジデリンの検出には適していません。正しくは:ヘモジデリンの検出にはベルリンブルー染色が用いられます。選びやすい理由:青色系の染色であるため、見た目の色調から誤って選択される可能性があります。混同注意:ムコ多糖類の染色と鉄の染色を混同する可能性があります。
- 2. 正解。左心不全では肺うっ血が生じ、赤血球が肺胞内に漏出し、マクロファージに貪食されてヘモジデリンとして蓄積します。ベルリンブルー染色は、組織中のヘモジデリン(鉄)を青色に染め出す特異的な染色法であり、この病態の確認に用いられます。下図の青色に染まった顆粒はヘモジデリンの沈着を示唆しており、これはベルリンブルー染色による所見と一致します。選びやすい理由:特になし。関連する知識があれば正答にたどり着きやすい選択肢です。混同注意:他の青色系の染色法と混同することがあります。
- 3. メチレンブルー染色は、一般的に細菌や細胞核の染色、あるいは生体染色などに用いられますが、組織中のヘモジデリン(鉄)を特異的に検出する染色ではありません。正しくは:ヘモジデリンの検出にはベルリンブルー染色が用いられます。選びやすい理由:日常的に耳にする機会の多い青色系の染色であるため、漠然とした知識で選んでしまう可能性があります。混同注意:一般的な細菌染色や細胞核染色と、特殊な金属検出染色を混同する可能性があります。
- 4. ナイルブルー染色は、脂肪滴(特に中性脂肪と酸性脂肪)の検出に用いられる染色法であり、組織中の鉄(ヘモジデリン)の検出には適していません。正しくは:ヘモジデリンの検出にはベルリンブルー染色が用いられます。選びやすい理由:他の青色系の染色と同様に、見た目の色調から選択される可能性があります。混同注意:脂肪染色と鉄染色を混同する可能性があります。
- 5. トルイジンブルー染色は、マスト細胞の顆粒(ヘパリンやヒスタミンなど)や軟骨のムコ多糖類など、異染性を示す物質の検出に用いられますが、ヘモジデリンの検出には特異的ではありません。正しくは:ヘモジデリンの検出にはベルリンブルー染色が用いられます。選びやすい理由:青色系の染色であり、細胞内の顆粒を染める点から、ヘモジデリンの顆粒を連想させてしまう可能性があります。混同注意:マスト細胞の顆粒染色やムコ多糖類染色と、鉄の染色を混同する可能性があります。
国試ポイント
左心不全における肺組織の変化(ヘモジデリン沈着)と、その検出に用いられる特殊染色(ベルリンブルー染色)の知識が問われています。病態生理と組織学的な所見、それに合致する特殊染色の組み合わせを理解しているかがポイントです。画像問題として、ベルリンブルー染色で染まったヘモジデリン顆粒の組織像を認識できる必要があります。
混同注意
他の青色系染色(アルシアンブルー、メチレンブルー、ナイルブルー、トルイジンブルーなど)とベルリンブルー染色の目的・対象物質を混同しやすい。それぞれの染色の対象(ムコ多糖類、細菌・核、脂肪、マスト細胞など)を正確に理解しておくことが重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、まず画像の所見から何が沈着しているか(ここでは青い顆粒=鉄)を判断し、次にその物質を特異的に染め出す染色法は何かを考える必要があります。他の臓器における鉄沈着(例:ヘモクロマトーシス)の鑑別にもベルリンブルー染色が使われることを関連付けて知識を広げましょう。
関連知識
ヘモジデリン:鉄貯蔵蛋白の一つで、フェリチンが分解・凝集して生じる。主にマクロファージ内に蓄積する。鉄過剰症や溶血性貧血、うっ血など様々な病態で認められる。/ 心臓病細胞(heart failure cells):肺胞マクロファージがヘモジデリンを貪食した細胞で、心性肺水腫や左心不全の際に肺組織に出現する。/ その他の特殊染色:PAS染色(糖原、中性ムコ多糖)、アザン染色(膠原線維)、エラスチカ・ワンギーソン染色(弾性線維)、コンゴーレッド染色(アミロイド)など。