医療コラム
朝起きて一歩目にかかとが痛いのはなぜ?考えられる原因と受診の目安
まず結論
朝起きて最初に床に足をついたときにかかとの裏が痛み、歩き始めて数分〜10分ほどで一時的に和らぐのは、足底腱膜炎によく見られる痛み方です(米国整形外科学会・MSDマニュアル家庭版)。
ただし、けがのあとの強い痛み・足の形の変化・歩けないときは骨折などの可能性があり、その日のうちに医療機関に相談してください(英国の公的医療情報)。自宅での対処を2週間続けても良くならない、しびれがある、糖尿病があるときも受診の目安です(英国の公的医療情報)。症状だけで病名は決められません。
すぐ受診が必要な症状
- 足の痛みに胸の痛み・冷や汗・息切れ・動悸を伴う → 直ちに医療機関へ(MSDマニュアル家庭版「腕や脚の痛み」)
- 突然ひどく痛み出した、足が冷たい・青白い、急なむくみが出た、痛む側の足に新しいしびれや力の入りにくさがある → 直ちに医療機関へ(同)
- けがのあとにかかとが強く痛む、痛みで気が遠くなる・めまい・吐き気がする/足や足首の形が変わった、変な角度になっている/けがのときに「ポキッ」という音がした/歩けない、つま先立ちで歩けない、階段を上れない/ふくらはぎや足首が腫れて内出血がある → その日のうちに医療機関へ相談(英国の公的医療情報「Heel pain」)
上の2つは脚の痛み全般で注意すべき徴候(MSDマニュアル家庭版)、3つ目はかかとや足首の骨折の可能性がある症状として英国の公的医療情報が急ぎの相談を勧めるものです。骨折が疑われるときは自分で手当てしようとしないでください(同)。
※胸の痛みや息苦しさが強いとき、意識がおかしいときは、ためらわず救急車(119番)を呼んでください(medimichi の注記)。
当てはまるときは、ためらわず 119 または救急外来へ。
受診の目安
- 痛みが強い、またはふだんの生活ができないほど痛む
- 痛みがだんだん強くなる、またはくり返す
- 自宅での対処を2週間続けても良くならない
- 足にしびれや、感覚が鈍いところがある
- 糖尿病があってかかとが痛む(足のトラブルが重くなりやすいため)
上の5つは英国の公的医療情報「Heel pain」が挙げる目安です。日本での相談先は整形外科です(medimichi の注記)。急に強いかかとの痛みが出て少し腫れているときは、足底腱膜が切れている(断裂)ことがあり、MRIなどの検査が行われることがあります(MSDマニュアル プロフェッショナル版)。
なぜ「朝の一歩目」が痛むのか
足の裏には、かかとの骨から足の前のほう(足の指の付け根)まで伸びる丈夫な組織(足底腱膜)があり、土踏まずのアーチを支えています(米国整形外科学会・MSDマニュアル家庭版)。足底腱膜炎で痛みが最も多いのは、この足底腱膜がかかとの骨に付く部分です(MSDマニュアル家庭版)。
米国整形外科学会は、多くの人が足先を下に向けたまま眠るため足底腱膜がゆるんだ状態になることを、朝にかかとが痛む理由の一つとして挙げています。
痛みは歩き始めて5〜10分ほどで一時的に和らぎますが、同じ日のうちにまた痛むことがあります(MSDマニュアル家庭版)。朝だけでなく、車での長い移動など、長く休んだあとの歩き始めにも起こります(米国整形外科学会)。
足底腱膜炎に多い痛み方
| 見るところ | 足底腱膜炎でよくあること |
|---|---|
| 場所 | かかとの裏、特に土踏まずとの間あたり(英国の公的医療情報・MSDマニュアル家庭版) |
| 痛むとき | 朝の一歩目、長く休んだあとの歩き始め(米国整形外科学会) |
| 経過 | 歩くうちに和らぐ。運動中より、運動を終えたあとに強まりやすい(米国整形外科学会) |
| そのほか | 足の指を床から持ち上げにくいことがある(英国の公的医療情報)。歩いているときに、足の裏の内側に焼けるような・刺すような痛みを感じる人もいる(MSDマニュアル家庭版) |
なりやすい要因(運動量の急な増加・立ち仕事・靴・足の形・体重など)は「足底腱膜炎の原因」にまとめています。
足底腱膜炎のほかに考えられる原因
かかとの痛みは、足底腱膜炎のほかに、けがや滑液包炎、関節リウマチ、痛風などでも起こります(MedlinePlus)。次のような違いがあるときは、別の原因のこともあります。
| 考えられる原因 | 手がかりになる症状 | 出典 |
|---|---|---|
| かかとの骨の骨折・アキレス腱の断裂 | けがのときに急に鋭く痛む、腫れる、「ポキッ」という音、歩きにくい | 英国の公的医療情報 |
| アキレス腱の炎症 | かかとの後ろ側が痛み、足首やふくらはぎに広がる | 英国の公的医療情報 |
| 滑液包炎 | 赤く腫れて、鈍くうずくように痛む(英国の公的医療情報)。靴を脱いだときなどに脈打つように痛む(MSDマニュアル プロフェッショナル版) | 英国の公的医療情報・MSDマニュアル プロフェッショナル版 |
| 足根管症候群(神経の圧迫) | 足首の内側を中心に、焼けるような痛み・ピリピリ感。つま先へ広がることがあり、歩くと強まる | MSDマニュアル家庭版 |
| 痛風 | かかとの後ろ側が急に強く痛み、赤く熱をもつ | MSDマニュアル プロフェッショナル版 |
| 関節リウマチなど | かかとの痛みの原因の一つとして挙げられている | MedlinePlus |
| 腰の神経の病気 | 腰から足へ痛みが走る | MSDマニュアル プロフェッショナル版 |
表は見分けるための手がかりで、自分で病名を決めるためのものではありません。診断は医師の診察によります。
「かかとの骨のとげ(骨棘)」が原因?
X線写真で、かかとの骨にとげのような出っ張り(踵骨棘)が見つかることがあります。ただし、骨棘がなくても足底腱膜炎は起こり、骨棘がある人の多くは痛みがありません。骨棘があるだけで診断や治療が決まるわけではないとされています(MSDマニュアル家庭版)。
受診までの間にできること
上の「すぐ受診が必要な症状」に当てはまらない場合、英国の公的医療情報は次のような対処を挙げています。
- 休めるときは休み、かかとを高くする
- タオルで包んだ保冷剤などを、1回20分まで、2〜3時間おきに当てる
- かかとが低く、底のやわらかい、幅にゆとりのある靴をはく。ハイヒールや先の細いきつい靴は避ける
- やわらかい中敷きやヒールパッドを使う
- 長く歩く・立つのを避ける。特に裸足で長く立たない
- やさしいストレッチをこまめに行う(やり方は「足底腱膜炎のストレッチ」)
- 体重が多い場合は減らす
市販の痛み止めを使うときは、薬剤師に相談し、添付文書の用法・用量を守ってください。米国整形外科学会は、イブプロフェンなどの痛み止めを1か月をこえて使うときは医師に相談するよう勧めています。
受診したら:診察と、良くなるまでの目安
診察では、かかとの骨に足底腱膜が付く部分を押したときの痛みなどを確かめます(MSDマニュアル家庭版)。骨折などを見分けるためにX線検査を行うことがあります(米国整形外科学会)。簡単な治療を始めた人の90%以上が10か月以内に良くなるとされ(米国整形外科学会)、手術が必要になることはまれです(MedlinePlus)。
検査や治療(ストレッチ・靴や中敷き・夜間用の装具・注射など)の詳しい内容は「足底腱膜炎の治療」を見てください。
ここから下は、医学的な説明ではなく、セルフケア用品の案内です。
出典・確認日
- 英国の公的医療情報(NHS)「Heel pain」(考えられる原因・自宅での対処・受診の目安・すぐ受診が必要な症状。NHSの最終レビュー日 2025-10-24)
- 米国整形外科学会 OrthoInfo「Plantar Fasciitis and Bone Spurs」(足底腱膜の仕組み・朝に痛む理由の一つ・痛み方・痛み止めの使用期間・経過)
- MSDマニュアル家庭版「足底腱膜炎」(痛む場所・痛みの時間経過・なりやすい要因・骨棘・診断。2025年10月更新)
- MSDマニュアル家庭版「足根管症候群」(神経の圧迫による痛みの特徴。2025年10月更新)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「足底腱膜炎」(断裂の可能性・ほかの病気との違い)
- MSDマニュアル家庭版「腕や脚の痛み」(脚の痛み全般で注意すべき徴候)
- MedlinePlus「Heel Injuries and Disorders」(かかとの痛みのほかの原因)