退院1か月後、隣町に住んでいる長男がAさん宅を訪ねると、Aさんは嘔吐と下痢をしていた。長男が付き添ってかかりつけの診療所を受診したところ、Aさんは感染性胃腸炎と診断された。Aさんの長男から依頼を受け、訪問看護師はAさんの体調確認のために臨時で訪問した。このときの訪問看護師の対応で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
感染性胃腸炎の最も効果的な感染経路遮断策は、手洗いの徹底です。訪問看護師は、患者本人や家族が正しい手洗い方法を理解し、実践できているかを確認し、必要に応じて指導することが、家庭内での感染拡大を防ぐ上で極めて重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 一般的な感染性胃腸炎(ウイルス性など)は、個人の家庭で発生した単一の事例であれば、感染症法に基づく発生届の提出義務はありません。発生届の対象となるのは、食中毒や特定の病原体による感染症、または集団発生の場合などです。正しくは:発生届の義務がある感染症(例:腸管出血性大腸菌感染症など)や、集団発生の疑いがある場合のみ、保健所へ報告が必要となります。選びやすい理由:「感染症」という言葉から、すべて保健所への報告が必要だと誤解しやすいかもしれません。特に集団発生や食中毒のケースでは報告義務があるため、混同しやすいです。混同注意:感染症法に基づく「届出」が必要な疾患と、一般的な感染症対策の混同。または、集団発生時の対応と個人宅での対応の混同。
- 2. 正解。感染性胃腸炎の感染拡大防止において、最も基本的なかつ重要な対策が手洗いです。特にAさんは一人暮らしで高齢者であり、感染管理の知識や実践能力が低下している可能性もあるため、訪問看護師が手洗いの方法や実施状況を確認し、必要に応じて指導することは極めて重要です。
- 3. 感染性胃腸炎の診断を受けたからといって、直ちに全ての訪問介護サービスを中止するのは適切ではありません。Aさんの日常生活に必要な援助が滞る可能性があります。まずは感染対策を強化し、サービス提供者(訪問介護員)が安全に支援を継続できるか、Aさんの状態と照らし合わせてケアマネジャーと相談し、必要に応じてサービス内容の見直しや一時的な変更を検討するべきです。正しくは:介護支援専門員と連携し、感染予防策を講じた上でのサービス継続の可否や、必要に応じたサービス内容の調整について相談する。選びやすい理由:感染症の拡大を防ぐために、一見するとサービスを中止するのが最善策のように思えるかもしれません。特に訪問介護員への感染リスクを懸念する視点から、この選択肢を選びがちです。混同注意:感染管理の徹底と、サービス継続の判断の混同。感染対策と介護継続のバランスの取り方。
- 4. 吐物で汚染された衣類は、適切な消毒(熱水洗濯や次亜塩素酸ナトリウムなど)を行った上で洗濯する必要があります。室内干し自体が不適切というわけではありませんが、換気が不十分な室内での乾燥は、湿気によって雑菌が繁殖しやすくなるリスクがあります。また、日光の紫外線による消毒効果も期待できません。重要なのは、衣類の「消毒と徹底的な洗浄」であり、「室内干し」を指示することが最も適切なアドバイスとは言えません。正しくは:長男に吐物で汚染した衣類は、まず汚物を除去し、塩素系漂白剤などで消毒した後、他の洗濯物と分けて洗濯し、乾燥させるよう伝える。可能な場合は、乾燥機や屋外の天日干しで完全に乾燥させるのが望ましい。選びやすい理由:吐物処理の必要性は認識されているため、洗濯するという部分は正しいと判断しやすいです。しかし、「室内干し」という具体的な方法が、感染管理の観点から必ずしも最適とは言えない点で不適切です。混同注意:吐物処理の重要性と、具体的な洗濯・乾燥方法の適切さに関する知識。特に、室内干しが感染管理上、どのようなリスクを持つのか(乾燥不足、換気不足による菌の繁殖)を理解していないと選びやすいです。
国試ポイント
感染症患者宅への訪問看護における、最も基本的かつ優先度の高い感染管理の知識を問う問題です。特に、手洗いの重要性と、誤った感染対策に関する判断力が見られます。一人暮らしの高齢者という状況設定も、指導の必要性を強調しています。
混同注意
感染症の「発生届」の対象となる疾患の範囲、サービス中止の判断基準、吐物処理における洗濯・乾燥方法の具体的な感染管理上の注意点などが混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、感染症の基本対策(手洗い、消毒、隔離など)が適切に実施されているか、その対象者(患者本人、家族、介護者)と環境(家庭、施設)に合わせた具体的な方法が選択肢として提示されるかを注意して判断する。特に「最も適切」な対応を選ぶ問題では、基本的な感染経路遮断策が優先される傾向にある。
関連知識
感染性胃腸炎の感染経路と予防策(飛沫感染、接触感染、経口感染、手洗い、マスク、個人防護具) 感染症法における発生届の対象となる疾患(五類感染症など、腸管出血性大腸菌感染症など特定の胃腸炎は届出義務あり) 家庭における感染管理(吐物処理、リネン類の消毒、環境整備) 高齢者の感染管理における注意点(免疫力低下、自己管理能力の低下) 多職種連携(ケアマネジャーとの連携、サービス調整)