44歳の女性。3年前に全身型重症筋無力症と診断され、拡大胸腺摘出術を受けた。現在ステロイド内服治療を継続し、定期的にγグロブリン大量静注療法を受けている。この患者の理学療法で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
重症筋無力症では、アセチルコリン受容体の障害により筋収縮が正常に行われず、易疲労性が顕著です。運動療法は筋力の維持・向上に重要ですが、過度な負荷は症状を悪化させる危険性があるため、患者の疲労度や筋力低下の程度を常に評価しながら、漸増負荷の原則に基づいて慎重に実施することが必須です。
選択肢ごとの解説
- 1. 重症筋無力症は自己免疫疾患であり、CK値が上昇するのは主に筋線維の破壊を伴う疾患(例:筋ジストロフィー、多発性筋炎)です。重症筋無力症ではCK値は通常正常です。正しくは:運動量の調整は、患者の自覚症状(易疲労性、筋力低下の程度)や客観的な筋力評価、疲労度評価を指標に行うべきである。選びやすい理由:運動関連の疾患なので、何らかの血液検査値を指標にするという発想は理解しやすい。混同注意:筋炎や筋ジストロフィーなど、筋細胞の破壊が起こる疾患と混同しやすい。
- 2. 正解。重症筋無力症の患者は易疲労性が特徴であり、過度な運動は筋疲労や症状悪化を引き起こす可能性があります。そのため、筋力増強運動を行う際には、過用を避け、患者の状態を注意深く観察しながら、段階的に負荷を上げていく漸増負荷の原則が重要です。選びやすい理由:症状悪化を恐れて運動を控えるべきではないかと考える受験生もいるかもしれないが、適切な運動療法は筋力維持に重要である。混同注意:運動療法そのものを避けるべきと誤解する可能性がある。
- 3. 重症筋無力症の主な症状は筋力低下と易疲労性であり、筋緊張の亢進は通常見られません。ボツリヌス毒素療法は、痙縮やジストニアなどの筋緊張亢進を伴う疾患に対して用いられる治療法です。正しくは:重症筋無力症では筋緊張亢進は一般的ではないため、ボツリヌス毒素療法は考慮しない。選びやすい理由:筋疾患に対する薬物療法の一つとして知識があるため、選択肢として選びやすい。混同注意:痙縮やジストニアなど、筋緊張亢進を伴う他の神経疾患と混同しやすい。
- 4. 重症筋無力症クリーゼでは、呼吸筋の麻痺により換気障害が起こりますが、これは主に拘束性換気障害です。呼吸筋の収縮力が低下し、肺が十分に拡張できないために生じます。閉塞性換気障害は気道の狭窄や閉塞(例:喘息、COPD)によって起こるものです。正しくは:クリーゼ発生時には、呼吸筋麻痺による拘束性換気障害を念頭に入れるべきである。選びやすい理由:クリーゼで換気障害が起こることは正しい認識なので、換気障害の種類に注意を払わないと誤解しやすい。混同注意:閉塞性換気障害と拘束性換気障害の違いを混同しやすい。重症筋無力症は神経筋接合部の異常であり、呼吸器自体に問題があるわけではない。
- 5. 体温上昇は重症筋無力症の神経症状を増悪させる因子の一つですが、これは神経症状ではなく、筋力低下が増悪するためです。発熱などで体温が上昇すると、アセチルコリンの放出や受容体の機能に影響を与え、筋疲労が増強されることがあります。正しくは:体温上昇で筋力低下が増悪するため、環境温に注意する。選びやすい理由:重症筋無力症の悪化因子として「体温上昇」があることは正しい知識なので、細かい表現(神経症状と筋力低下)を見落とすと選びやすい。混同注意:神経症状(しびれ、感覚異常など)と、筋力低下や易疲労性といった筋症状を混同しやすい。
国試ポイント
重症筋無力症の病態生理、特に易疲労性とその管理に関する知識が問われています。具体的な理学療法のアプローチとして、運動負荷の設定方法、および症状悪化因子と合併症(クリーゼ時の呼吸障害の種類)に関する理解が重要です。また、他の筋疾患や神経疾患との鑑別も問われることがあります。
混同注意
重症筋無力症の『筋力低下』と、他の神経疾患の『筋緊張亢進』、あるいは『閉塞性換気障害』と『拘束性換気障害』のように、似た用語や症状を持つ疾患との区別が曖昧だと誤答しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、重症筋無力症患者に対する運動療法の具体的な処方内容(強度、頻度、時間)や、日常生活での指導内容、あるいはクリーゼ時の初期対応など、より実践的な知識が問われる可能性があります。また、多発性筋炎やギラン・バレー症候群など、他の神経筋疾患との鑑別を求める問題も考えられます。
関連知識
重症筋無力症の病態生理(神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体抗体の作用)、臨床症状(眼瞼下垂、複視、嚥下障害、四肢筋力低下、易疲労性)、診断基準、治療(薬物療法:抗コリンエステラーゼ薬、ステロイド、免疫抑制剤、胸腺摘出術、γグロブリン療法)、クリーゼの病態と管理、理学療法の具体的な注意点(過用症候群の回避、呼吸理学療法、ADL指導)。