虚血性心疾患に対する運動療法の効果について適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回理学療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
虚血性心疾患に対する運動療法は、心血管リスク因子の改善(血圧、脂質プロファイル、血糖コントロール)、心機能の向上、自律神経バランスの是正、精神的健康の改善など多岐にわたる効果をもたらします。これらの複合的な効果により、心血管イベントの発生率や再入院頻度が有意に低下することが複数の大規模研究で示されており、リハビリテーションの重要な柱となっています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。虚血性心疾患患者に対する運動療法は、心血管イベントのリスクを低下させ、全体的な健康状態を改善することで、再入院の頻度を有意に減少させることが多くの研究で示されています。これは心機能の改善、リスク因子の管理、生活習慣の改善など複合的な効果によるものです。
- 2. 運動時には生理的に収縮期血圧が上昇しますが、これは運動療法の「効果」ではなく、運動中の身体反応です。運動療法の長期的な効果としては、安静時や同程度の運動負荷時の収縮期血圧を低下させることが期待されます。正しくは:長期的な運動療法により、安静時や同程度の運動負荷時の収縮期血圧は低下する。選びやすい理由:運動中に血圧が上がるのは事実なので、一見正しいように感じられる。混同注意:運動中の急性反応と、長期的な運動療法の効果を混同しやすい。
- 3. 運動療法は、血液凝固能を改善し、血小板の凝集能をむしろ抑制する方向に作用することが知られています。これにより、血栓形成のリスクを低減する効果が期待されます。正しくは:血小板の凝集能力はむしろ低下する。選びやすい理由:運動が身体に負荷をかけることで、何らかの因子が増加するという連想から誤って選択してしまう可能性がある。混同注意:炎症反応やストレス反応との混同。運動の直接的な血液凝固系への影響を誤解する。
- 4. 規則的な運動療法は、自律神経系のバランスを改善し、交感神経の過剰な緊張を抑制し、副交感神経活動を相対的に優位にすることで、心拍数の減少や心保護作用をもたらします。正しくは:交感神経の緊張は抑制され、副交感神経活動が相対的に優位になる。選びやすい理由:運動は交感神経を活性化させる、という運動中の急性反応と混同してしまう。混同注意:運動時の急性反応(交感神経の活性化)と、長期的な運動トレーニングによる効果(自律神経のバランス改善、交感神経活動の抑制)を混同しやすい。
- 5. 運動療法は、動脈硬化を抑制する作用を持つ「善玉コレステロール」であるHDLコレステロールの値を上昇させる効果が期待されます。低下は誤りです。正しくは:HDLコレステロール値は上昇する。選びやすい理由:コレステロール全般への漠然とした知識で、どれかが増減する、と誤解してしまう。またはLDLコレステロール(悪玉)の低下と混同する。混同注意:LDLコレステロール(悪玉)とHDLコレステロール(善玉)の役割と、それぞれに対する運動療法の効果を混同しやすい。
国試ポイント
虚血性心疾患に対する運動療法の多岐にわたる効果の中から、特に臨床的に重要なアウトカム(再入院頻度の低下)を問う問題です。運動時の急性反応と、長期的なトレーニング効果の違いを正確に理解しているか、また、個々の生理学的指標(血圧、血小板、自律神経、脂質)に対する運動療法の方向性を把握しているかが問われます。
混同注意
運動中の急性反応(例:収縮期血圧上昇、交感神経緊張亢進)と、長期的な運動トレーニングによる適応・効果(例:安静時血圧低下、交感神経活動抑制)を混同しやすい。また、LDLコレステロールとHDLコレステロールのような類似する概念の効果の方向性も混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合は、運動療法がもたらす長期的な心血管イベントリスクの低減効果、死亡率の減少、QOLの改善といった「最終的なアウトカム」に加えて、リスク因子の改善(血圧、脂質、血糖)、心機能の改善、自律神経系の調節、炎症反応の抑制、血管内皮機能の改善といった「中間的な生理学的効果」についても問われる可能性があります。特に、数字的な目標値や具体的な運動処方の原則(FITT-VP)に関する知識も重要になります。
関連知識
虚血性心疾患の病態生理、心臓リハビリテーションの目的と内容、運動負荷試験の解釈、脂質異常症・高血圧・糖尿病に対する運動療法の効果、自律神経系の調節と運動。特に、心臓リハビリテーションのガイドラインで推奨される運動療法の具体的効果(心拍数低下、運動耐容能向上、QOL向上、死亡率・再入院率低下など)を網羅的に理解しておくことが重要です。