病気の解説
胃潰瘍
緊急性の高い症状
次のような症状は、潰瘍からの出血や、胃に穴があく(穿孔)といった命に関わる合併症のサインのことがあります。昼夜を問わず、すぐに医療機関を受診してください(日本消化器病学会)(NIDDK)。
- 血を吐く、またはコーヒーかすのような黒っぽいものを吐く
- 黒くタールのような便、または赤い血が混じった便が出る
- 急に起こった激しい腹痛が続く
- めまい、ふらつき、動悸、失神
意識がもうろうとする、ぐったりしているなどショックが疑われるときは、ためらわずに119番に連絡してください。
出典:日本消化器病学会「患者さんとご家族のための消化性潰瘍ガイド2023」、NIDDK「Symptoms & Causes of Peptic Ulcers」
当てはまるときは、ためらわず 119 または救急外来へ。
受診の目安
- みぞおちや上腹部の鈍い痛み・焼けるような痛みが、くり返したり続いたりするとき(日本消化器病学会)(NIDDK)
- 吐き気、胸やけ、食後のもたれ、すぐにおなかがいっぱいになる感じが続くとき(日本消化器病学会)(NIDDK)
- 痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)や、脳卒中・心筋梗塞の予防のためのアスピリンを飲んでいて、胃の症状が出てきたとき(日本消化器病学会)
- 健康診断などでピロリ菌の感染や胃の異常を指摘されたとき
相談先は消化器内科や内科です。胃の痛みや胸やけはほかの病気でも起こり、症状だけで胃潰瘍かどうかは判断できません。自覚症状がまったくないまま進むこともあります(日本消化器病学会)(NIDDK)。
基本
胃潰瘍とは
胃の内側の粘膜が深く傷つき、えぐれたようになった状態です。十二指腸にできるものと合わせて「消化性潰瘍」と呼ばれます(日本消化器病学会)(NIDDK)。胃酸などの胃を攻撃する力と、粘膜を守る力のバランスが崩れると起こりやすくなるとされます(日本消化器病学会)。日本では、ピロリ菌の感染者が減り除菌治療が広まったことで患者さんは減っていますが、高齢化に伴い、痛み止めなどの薬による潰瘍の割合が高まっているとされます(日本消化器病学会)。
主な症状
- 上腹部やみぞおちの鈍い痛み(日本消化器病学会)。焼けるような痛みで、出たり消えたりすることもあります(NIDDK)。
- 吐き気、嘔吐、胸やけ、おなかの張り、げっぷ(日本消化器病学会)(NIDDK)
- 食後すぐにおなかがいっぱいになる、食後のもたれ(NIDDK)
症状がまったくなく、出血などの合併症が起きて初めて気づく人もいます(日本消化器病学会)(NIDDK)。少しずつの出血が続くと、貧血が進むことがあります(日本消化器病学会)。
原因・なりやすい要因
- ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染:主な原因のひとつです(日本消化器病学会)(NIDDK)。
- 薬:解熱・鎮痛に使う非ステロイド性抗炎症薬は、胃の粘膜を守る物質の働きを抑えるため、潰瘍の原因になります。少量のアスピリンも同じ仲間の薬です(日本消化器病学会)。長く飲む、量が多い、複数を併用する、ピロリ菌にも感染している、といった場合に危険が高まるとされます(NIDDK)。
- 生活習慣:喫煙、お酒の飲みすぎ、睡眠不足、強いストレスなどは、潰瘍を悪くする要因とされます(日本消化器病学会)。
このほか、ステロイドなど一部の薬、重い病気、まれな病気などが原因になることもあります(NIDDK)。
検査と診断
診断
まず内視鏡検査(胃カメラ)やバリウム検査で潰瘍があるかを確かめます。最近は内視鏡検査が多く、出血が疑われるときは急いで内視鏡を行い、その場で血を止める処置をすることもあります。内視鏡では組織の一部を取り、がんではないかを顕微鏡で確かめることもできます(日本消化器病学会)。
ピロリ菌に感染しているかどうかは、内視鏡で取った組織を使う方法のほか、息を調べる検査(尿素呼気試験)、血液や尿の抗体検査、便の検査などで調べます。胃酸を抑える薬や抗菌薬を飲んでいると正しく判定できないことがあるため、飲んでいる薬を医師に伝えることが大切です(日本消化器病学会)。
治療
治療
- 飲み薬による治療:胃酸の分泌を抑える薬や、粘膜を守る薬を使います。潰瘍は通常6〜8週間ほどで治るとされます(日本消化器病学会)。
- ピロリ菌の除菌:ピロリ菌が見つかった場合は、除菌治療が勧められます。除菌に成功すると潰瘍の再発が抑えられるとされ、日本では保険診療で受けられます。最初の除菌では、胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬、またはボノプラザンなどのP-CAB)と2種類の抗菌薬(アモキシシリン、クラリスロマイシン)を7日間飲みます。うまくいかなかった場合は、抗菌薬の一部をメトロニダゾールに替えて、もう一度7日間の除菌を行います(日本消化器病学会)。
- 除菌できたかの確認:薬を飲み終えてから4週間以降に、息の検査や便の検査で確かめます(日本消化器病学会)。
- 痛み止めが原因の場合:その薬を続ける必要があるときは、胃酸を抑える薬をあわせて飲むことが必要とされます。自己判断で中止せず、主治医と相談します(日本消化器病学会)。
- 合併症の治療:出血には内視鏡で血を止める処置が、穿孔には手術が必要になることが多いとされます(日本消化器病学会)。
日常生活の注意・セルフケア
治療中は、医療機関の指示を最優先にしてください。
- 痛みが軽くなっても、自分の判断で薬をやめないようにします。除菌の薬は7日間きちんと飲みきることが大切です(日本消化器病学会)。
- 禁煙し、お酒の飲みすぎ、暴飲暴食、睡眠不足を避け、ストレスをためない生活を心がけます(日本消化器病学会)。
- 二次除菌でメトロニダゾールを飲んでいる間は、お酒を飲まないようにします(日本消化器病学会)。
- 除菌の薬で発疹や重い下痢が出たときは、早めに主治医に相談します(日本消化器病学会)。
経過と生活
経過
ピロリ菌が残っていると、いったん治っても再発しやすいとされます。除菌に成功すると再発が抑えられ、除菌後に再び感染することはまれとされます(日本消化器病学会)。ピロリ菌は胃がんの原因になることも知られています(日本消化器病学会)。
胃潰瘍と関係する症状
症状のページでは、同じ症状が出るほかの病気や受診の目安も確認できます。
消化器内科で扱うほかの病気
国家試験での出題
医療系の国家試験で、この病気に関係して出題された過去問です(学生・受験生向け)。
出典
日本消化器病学会「患者さんとご家族のための消化性潰瘍ガイド2023」 / NIDDK「Symptoms & Causes of Peptic Ulcers」
内容の確認日:2026-10-13(次回確認予定 2027-04-13)。複数の公的情報源の事実をもとに medimichi が独自にまとめています。
この記事は一般的な医療情報の解説で、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください。緊急時は 119 / 医療機関へ。