次の文で示す患者の病証で最もみられる症状はどれか。「42歳の女性。主訴は月経周期の乱れ。子どもの面倒をみながらの在宅勤務でイライラすることが多い。」
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:公益財団法人東洋療法研修試験財団ホームページ(過去の試験問題等)。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
問題文の「42歳の女性。月経周期の乱れ」「在宅勤務でイライラすることが多い」という情報は、中医学における肝鬱気滞の典型的な病証を示唆しています。肝は疏泄を主り、情志の調整や気の巡り、血の貯蔵・調節に関与します。ストレス(イライラ)により肝の疏泄機能が失調し、気の巡りが滞る(肝鬱気滞)と、胸悶、脇痛、ため息(太息)、月経不順などが現れやすくなります。したがって、太息は肝鬱気滞の代表的な症状であり、最もみられると考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。問題文の「イライラすることが多い」という記述は、肝の疏泄機能失調による肝鬱気滞を示唆しています。肝鬱気滞の代表的な症状の一つに、気の巡りが滞って息苦しさを感じ、無意識に深くため息をつく「太息」があります。これは肝気鬱結による胸膈部の気の不通と関連しています。
- 2. 呵欠(あくび)は、一般的に疲労、睡眠不足、あるいは気虚、陽虚、あるいは陰虚による虚熱など様々な原因で起こります。問題文の「イライラ」や「月経周期の乱れ」といった肝鬱気滞の核心症状とは直接的な関連性が薄く、最もみられる症状とは言えません。 正しくは:問題文の症例では、肝鬱気滞による太息が最も適切です。呵欠が主訴となる病態ではない。
- 3. 短気は、呼吸が浅く速い状態を指し、肺気虚や腎不納気、あるいは痰飲による肺気阻滞、心肺疾患などで見られます。問題文の「イライラ」は肝鬱気滞の情志症状であり、これ自体が直接「短気」を引き起こすことは稀です。むしろ気の巡りの停滞による「太息」がより特徴的です。 正しくは:問題文の症例では、肝鬱気滞による太息が最も適切です。短気は肺や腎の病証で多く見られます。
- 4. 噴嚔(くしゃみ)は、主に外邪(風邪など)が体表を襲った際に、肺の宣発粛降機能が影響を受け、異物を排出する反応として起こります。アレルギー性鼻炎などでも見られます。問題文の「イライラ」や「月経周期の乱れ」といった症状からは、肝鬱気滞との直接的な関連性はなく、最もみられる症状とは言えません。 正しくは:問題文の症例では、肝鬱気滞による太息が最も適切です。噴嚔は主に外感やアレルギーと関連が深いです。
国試ポイント
肝鬱気滞の症状と病態生理を正確に理解し、臨床推論できるようになることが重要です。特に、情志の変動(イライラ)、気の巡りの滞り(太息、胸脇苦満)、女性の生殖機能への影響(月経不順)を結びつけて覚える必要があります。
混同注意
肝鬱気滞と心火亢盛、肝陽上亢、脾気虚などの病証の区別が混同しやすいです。肝鬱気滞は情志の抑うつや気の滞り、疏泄失調が主徴ですが、心火亢盛は不眠や動悸、口渇、顔面紅潮など、肝陽上亢は頭痛やめまい、耳鳴り、顔面紅潮など、脾気虚は倦怠感や食欲不振、泥状便などが主となります。それぞれの鑑別ポイントを明確にすることが肝要です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、「イライラ」「ストレス」「精神的抑うつ」「胸悶」「月経周期の乱れ」「乳房脹痛」といったキーワードに注目し、これらが肝の疏泄機能失調、すなわち肝鬱気滞の病態を示唆していると判断します。特にため息(太息)は肝鬱気滞の非常に特徴的な症状として押さえておきましょう。
覚え方
同様の論点が出題された場合、「イライラ」「ストレス」「精神的抑うつ」「胸悶」「月経周期の乱れ」「乳房脹痛」といったキーワードに注目し、これらが肝の疏泄機能失調、すなわち肝鬱気滞の病態を示唆していると判断します。特にため息(太息)は肝鬱気滞の非常に特徴的な症状として押さえておきましょう。
対になる知識
肝鬱気滞と心火亢盛、肝陽上亢、脾気虚などの病証の区別が混同しやすいです。肝鬱気滞は情志の抑うつや気の滞り、疏泄失調が主徴ですが、心火亢盛は不眠や動悸、口渇、顔面紅潮など、肝陽上亢は頭痛やめまい、耳鳴り、顔面紅潮など、脾気虚は倦怠感や食欲不振、泥状便などが主となります。それぞれの鑑別ポイントを明確にすることが肝要です。
関連知識
肝の疏泄機能が失調すると、気の巡りが滞るだけでなく、血の巡りにも影響し、瘀血を形成することもあります。また、肝鬱が長期化すると化火して肝火上炎になったり、脾胃の運化を阻害して脾胃の不調(肝脾不和)を引き起こしたりすることもあります。さらに、女性では乳房脹痛、月経前症候群、子宮筋腫などにも関連します。中医学における五志と五臓の関係、五行色体表における肝と情志(怒)、味(酸)、季節(春)なども併せて覚えましょう。