病気の解説
鉄欠乏性貧血
緊急性の高い症状
鉄欠乏性貧血の裏には、胃や腸からの出血が隠れていることがあります(NHLBI)。次のようなときは、すぐに医療機関を受診してください(NIDDK)。
- 便が黒くタールのようになっている、便に血がまじる
- 血を吐いた、コーヒーの出がらしのようなものを吐いた
- 立ちくらみやふらつき、気を失いそうになる、強い息切れ
さらに、意識がぼんやりする・意識がない、脈が速い、顔色が真っ青、手足が冷たい、冷や汗が出るといった症状は、大量の出血による「ショック」のサインとされます(NIDDK)。この場合はためらわず119番で救急車を呼んでください。
出典:NIDDK「Symptoms & Causes of GI Bleeding」、NHLBI「Iron-Deficiency Anemia」
当てはまるときは、ためらわず 119 または救急外来へ。
受診の目安
- 疲れやすい、めまいや立ちくらみ、手足の冷え、顔色が悪いなどが続くとき(NHLBI)
- 健康診断で貧血を指摘されたとき
- 月経の量が多い、月経が長引くとき(NHLBI)
- 鉄剤を飲んでも貧血が良くならない、またはくり返すとき
まずは内科に相談します。貧血の原因を調べるために消化器内科での胃や大腸の検査、月経の量が多い場合は婦人科の受診が勧められることがあります。鉄欠乏性貧血は「鉄を補えば終わり」ではなく、なぜ鉄が足りなくなったのかを確かめることが大切です(NHLBI)。疲れやめまいはほかの多くの病気でも起こるため、症状だけで鉄欠乏性貧血かどうかを判断することはできません。
基本
鉄欠乏性貧血とは
赤血球をつくるのに必要な鉄が体の中で不足し、健康な赤血球を十分につくれなくなった状態です。貧血の中でもっとも多いタイプとされます(NHLBI)(MedlinePlus)。軽いうちは症状がないこともあります(NHLBI)。
主な症状
- 疲れやすさ、だるさ
- めまい、立ちくらみ
- 手足の冷え
- 顔色や皮膚の青白さ
- 頭痛、いらいら
(NHLBI)(MedlinePlus)
貧血が重くなると、息切れや胸の痛みが出ることがあります(NHLBI)。
原因・なりやすい要因
主な原因は大きく3つに分けられます(NHLBI)。
- 出血で鉄が失われる:月経の量が多い、出産時の出血、胃潰瘍・炎症性腸疾患・大腸ポリープや大腸がんなどによる胃や腸からの出血、けがや手術、解熱鎮痛薬(アスピリンなど)の常用、尿路からの出血など(NHLBI)(MedlinePlus)。胃や腸からの少量の出血は、目で見てもわからず、検査で初めて見つかることがあります(NIDDK)(MedlinePlus)。
- 鉄の吸収がうまくいかない:セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病、ピロリ菌感染、胃や腸の手術のあとなど(NHLBI)。
- 鉄の必要量が増える・とる量が足りない:妊娠中や授乳中、離乳食に移る時期の乳幼児、鉄の少ない食事、持久系のスポーツ(NHLBI)(MedlinePlus)。
腎臓の病気や長く続く炎症性の病気が関わることもあります(NHLBI)。
検査と診断
診断
血液検査で、赤血球の数や大きさ、ヘモグロビン、血液中の鉄、体に蓄えられた鉄の量を示すフェリチンなどを調べます(NHLBI)。
鉄が足りない原因として出血が疑われる場合は、便に血がまじっていないかを調べる検査(便潜血検査)や、口や肛門から細い内視鏡を入れて胃や大腸を調べる検査などが行われます(MedlinePlus)。
治療
治療
- 原因の治療:出血や吸収の問題があれば、その治療が欠かせません。体の中の出血を止めるために手術が必要になることもあります(NHLBI)。
- 鉄剤の服用:もっとも一般的な治療です。鉄が十分に戻るまでには数か月かかることが多いとされます。金属のような味、吐き気、下痢、便秘、胃の不快感などの副作用が出ることがあり、食事と一緒に飲む、量を減らす、種類を変えるといった工夫がされます(NHLBI)。
- 鉄の注射(点滴):重い場合や長く続く病気がある場合に、点滴で鉄を補うことがあります(NHLBI)。
- 輸血:重い場合に、赤血球と鉄をすばやく補うために行われることがあります(NHLBI)。
自己判断で市販の鉄サプリメントを飲み続けると、貧血の原因となっている病気の発見が遅れるおそれがあります。まずは医療機関で原因を確かめてください。
日常生活の注意・セルフケア
治療中は医療機関の指示を優先してください。食事では、次のような工夫が勧められています(NHLBI)。
- 豆類、卵、赤身の肉、鮭、豆腐、緑の濃い葉物野菜、鉄を加えたパンやシリアルなど、鉄を多く含む食品をとる
- オレンジ、いちご、トマトなどビタミンCの多い食品と一緒にとり、鉄の吸収を助ける
- 紅茶は鉄の吸収を妨げることがあるため、とりすぎない
- 幼児には鉄を含む食べ物を十分にとらせる
経過と生活
経過
治療しないままでいると、疲れや頭痛、むずむず脚症候群、心臓への負担、妊娠中の合併症、子どもの発達の遅れなどにつながることがあります(NHLBI)。原因を確かめたうえで治療を続けることで、改善が期待できます。
鉄欠乏性貧血と関係する症状
症状のページでは、同じ症状が出るほかの病気や受診の目安も確認できます。
血液内科で扱うほかの病気
国家試験での出題
医療系の国家試験で、この病気に関係して出題された過去問です(学生・受験生向け)。
出典
NHLBI「Iron-Deficiency Anemia」 / MedlinePlus「Anemia」 / NIDDK「Symptoms & Causes of GI Bleeding」 / MedlinePlus「Gastrointestinal Bleeding」
内容の確認日:2026-10-13(次回確認予定 2027-04-13)。複数の公的情報源の事実をもとに medimichi が独自にまとめています。
この記事は一般的な医療情報の解説で、診断・治療を目的としたものではありません。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関を受診してください。緊急時は 119 / 医療機関へ。