脊髄損傷
疾患
はじめに
脊髄損傷は、脊髄が何らかの原因で傷つくことによって、運動機能や感覚機能に障害が生じる病態です。損傷の部位や程度により、麻痺の範囲や日常生活動作の自立度が大きく異なります。
どんな病気か
脊髄損傷は、事故や転倒による頚椎や脊椎の損傷などによって引き起こされる運動機能および感覚機能の障害です。高齢者が転倒などにより頚椎過伸展損傷を起こすケースや、大動脈手術などの血流低下による発症が見られます。
原因と病態
脊髄が物理的に損傷を受けるほか、前脊髄動脈の血流障害による虚血によっても発生します。第6胸髄以上の高位損傷では、損傷部位より下方の有害な刺激が引き金となって交感神経が過剰な反射性興奮を起こし、急激な血圧上昇を招く自律神経過反射を引き起こすことがあります。
症状
損傷のレベルや病型によって多彩な症状が現れます。中心性頸髄損傷では解剖学的な神経線維の配列により下肢よりも上肢の障害が重度となり、前脊髄動脈症候群では運動麻痺と温痛覚障害が両側性に出現し深部感覚が温存されます。また、高位損傷では自律神経過反射による頭痛や発汗、著明な血圧上昇と徐脈がみられます。
検査・診断
高位診断および重症度評価にはアメリカ脊髄損傷協会(ASIA)の神経学的分類基準が用いられ、ミオトームによる運動機能とデルマトームによる感覚の詳細な評価が行われます。
治療と対応
自律神経過反射が生じた場合は、膀胱の過伸展や便秘、褥瘡などの有害な刺激となる原因を速やかに除去することが第一選択となります。放置すると脳出血などの致命的な合併症を招くおそれがあるため、ベッドの頭部挙上などの迅速な対応が必要です。
国家試験のポイント
国家試験では、第6胸髄以上の高位損傷でみられる自律神経過反射の誘因や症状、頚髄損傷のレベル(C5やC6など)ごとの残存機能と車椅子駆動や移乗動作などのADL到達目標の対応関係が頻出です。また、中心性頸髄損傷や前脊髄動脈症候群といった病型別の神経学的症状の組み合わせも重要なテーマとなります。
間違えやすいところ
自律神経過反射における血圧上昇と徐脈の組み合わせを、低血圧や頻脈をきたす他の循環器疾患やショック状態の病態と混同しないよう注意が必要です。また、各頸髄損傷レベルにおける残存筋の違いや、脊髄不全損傷ごとの症状の差異を正確に整理して理解することが求められます。